第25話 想像魔法炸裂
耳が破壊されてしまうような鳴き声とともに、巨大なマンドラゴラの周りに数え切れないほど魔法陣が現れた。
それがカッと輝くと同時……火の玉や、槍の形をした水が俺に向かって飛んできた。
「おぉ……。」
存在自体は知っていたが、初めて目にする
「それが魔法か!!」
俺の横を通り過ぎていく火の玉は確かに熱を持っていて、俺がいる地面に着弾した水の槍は深々と突き刺さった後、大地に吸収されていく。
「俺も使ってみたい……
魔法を避けながらそんな事をポツリと呟くと、目の前に通知画面が表示される。
『
「え?」
その通知画面が出た直後、俺の周りにもたくさんの魔法陣が現れて、そこから巨大マンドラゴラが放ったものとまったく同じ魔法が放たれた。
巨大な体躯のマンドラゴラは、その魔法を避けることができず、全てマトモに食らってしまっている。
俺自身、どうやって魔法を発動させたのか理解できずにいると、いつの間にか俺の肩に座っていたミカミさんが満足気に口を開く。
「うんうん、想像魔法のスキルもしっかりと機能してるね。」
「ミカミさん?さっきまでドーナさんと一緒だったんじゃ……。」
「ドーナちゃんなら後ろにいるよ〜。」
チラリと後ろを振り返ってみると、ドーナさんがヒラヒラとこちらに手を振っていた。
「さて、じゃあ軽く想像魔法について説明をしておこうか。戦闘しながら聞いてね。」
「分かりました。」
振り下ろされる丸太のような太い蔓を切りながら横に躱す。
「想像魔法は、キミがこんな魔法を使いたい……そう強く脳内でイメージしたものが、魔法として具現化する。」
「それ、どんな魔法でも良いんですか?」
「キミの魔力が足りるなら……
ミカミさんに言われた通り、頭の中で俺はあるイメージを膨らませる。すると、パッとすぐに周りに魔法陣が現れて、そこから太いレーザー光線が巨大マンドラゴラへと向かって放たれた。
「おぉ……。」
「パッと思いついた魔法がレーザー光線か、うんうん男の子っぽくて良き良き。」
ミカミさんが満足そうにしている最中にも、そのレーザー光線は巨大マンドラゴラを貫き、大きな風穴を開けていた。
それが決定打となり、巨大マンドラゴラは地面に倒れた。
『マンドラゴラ突然変異種を討伐しました。』
「あ、倒せたみたいです。」
討伐したという通知の後に続いて、レベルアップの通知が現れた。
『レベルアップに必要な経験値を満たしたためレベルが上昇し、レベル30になりました。レベルアップしたためステータス情報が更新されます。』
「今度はレベルアップの通知が……。」
これでレベル30か。そういえばさっきルカっていう女性を制圧したときは、レベルアップの通知が来なかったな。決定打になったのがドーナさんの攻撃だったからかな?
まだこの世界の経験値の仕組みについてよくわかってないから、その辺どうなっているのかさっぱりだ。
「ま、レベルが上がったのならそれでいっか。」
そして一つ大きく息を吐き出していると、こちらにドーナさんが歩み寄ってきた。
「流石だったよヒイラギ。正直な話横で見てたけど、まるで敵じゃなかったねぇ。」
「運が良かっただけですよ。」
「そんないい腕があるのに、あんまり謙遜するもんじゃないさ。物理攻撃に自信があるのはわかってたけど、まさか強力な攻撃魔法まで隠し持ってたとはねぇ。また驚かされたよ。」
驚いたって言ってるけど、少し嬉しそうにドーナさんはそう言うと、隣に転がる巨大マンドラゴラに目を向けた。
「このデカいマンドラゴラ、これからギルドに持って帰んないといけないんだけど、ヒイラギのマジックバッグに入るかい?入らないようだったらアタシのに入れてもいいけど。」
「多分……無理です。俺のマジックバッグ300kgまでしか入らないので。」
「ん、わかった。じゃあアタシが一旦預かっとくよ。」
すると、ドーナさんは腰につけていた小さなポーチへ、アッサリと巨大マンドラゴラを収納してしまった。
「ほぇ、ドーナちゃんのマジックバッグの容量ってどのぐらいなの?」
「アタシの?
「「えっ!?」」
俺とミカミさんは、思わず2人して驚きの声を上げてしまった。
「ただ、その代わり30日に1回……知り合いの魔法使いのとこに行かなきゃいけないんだよ。」
「でもでも、そんなマジックバッグ高かったんじゃないの?」
「いんや、試作品って貰ったもんだからねぇ……。」
「ドーナちゃんのそういう人脈良いねぇ、柊君もそう思うだろう?」
「そうですね。」
「ま、今度機会があったらアタシからアイツに掛け合ってみるよ。もしかしたら何か試作品みたいなの貰えるかも。」
「ぜひともお願いしたいよドーナちゃん!!」
そして、今回の標的だった人食いマンドラゴラを討伐し終えた俺達は、ここまで来た道をゆっくりと歩いて引き返すのだった。
ちなみに、ルカが吊るされていた場所に戻ってくると、そこには既に彼女の姿はなかった。どうにか頑張ってあの縄の拘束から抜け出したらしい。
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