第18話 初の依頼達成報酬
エルフのニーナさんを見送った後、俺はミカミさんと一緒に魔物ハンターギルドまで戻った。すると、ドーナさんが俺たちのことを待っていてくれた。
「おっ、帰ってきたねぇ。お疲れヒイラギ、ミカミ。」
「ただいまドーナちゃん。待たせちゃったかな?」
「いんや、アタシらもさっき帰ってきたばっかりだよ。衛兵に事件の詳細とか話さなきゃいけなかったからさ。」
酒場のテーブルから立ち上がると、ドーナさんは俺達についてくるように促して、魔物の買い取りの受付に向かった。そしてグレーウルフを虫眼鏡みたいなもので観察していた女性に声をかける。
「
「あ、ドーナさん。この状態なら2匹とも満額お支払いできますよ。無駄な傷跡もありませんし、どっちのグレーウルフも急所を一突きで仕留められてました。」
「ん、わかった。後で向こうのテーブルに金持って来てくれ。」
「は~い、了解しました!!」
くるりと踵を返す直前、ドーナさんはチラリと横たわるグレーウルフに目を向けると、じっと目を細めた。
「動きの機敏なグレーウルフ……しかも2匹相手にして両方とも急所突きで一撃か。やっぱ、アタシの見込んだ腕は確かだったみたいだねぇヒイラギ。」
「運が良かっただけですよ。」
「運……いや、それは違うねぇ。運が良いってだけなら自分は守れても、あのエルフまでは守れない。もちろん運の要素もあったかもしれない。でも、度胸と技量もなきゃ、誰かを守り切りながら戦うって難しいもんだよ。」
そう言ったドーナさんの表情は普段の様子とは違って、少し浮かないようだ。俺が気付いてるんだからミカミさんが気付かないわけない。
「おや、少し悲しそうだね。過去にこんな感じの状況で何かあったのかな?」
「……アタシが魔物ハンターの見習いだった時を思い出しただけだよ。あん時のアタシは自分の身を守るので精いっぱいだった。」
「すまなかった。嫌なことを思い出させてしまったようだね。」
「いいんだよ。あの事件があったから、アタシはここまで強くなれた。」
そう語りながら、ドーナさんは酒場でエールを3つ頼んで、注がれたエールの入ったグラスを2つこちらに手渡してくる。
「まっ、何はともあれ、よくヒイラギもミカミも怪我一つなく帰ってきたよ。こいつはアタシからの奢りだ。」
「奢りなら貰わないわけにはいかないね。ありがたく頂戴するよドーナちゃん。あ、店員さん、ちっちゃいお猪口を一つもらえないかな?」
「ありがとうございます。ドーナさん。」
「それでも飲みながら、今度は報酬の話に移ろうか。」
そしてまた席につくと、そこにジャラジャラと音が鳴る布袋が4つ、さっきのミースって人が持ってきた。
「ヒイラギさん、ミカミさんお疲れさまでした。私、受付嬢リーダーの
「「金貨40枚!?」」
俺とミカミさんは口をそろえて、そう聞き返してしまった。
「はいっ、依頼の基本報酬が金貨20枚で、状態の良いグレーウルフ2匹の素材買取料金として、追加で金貨20枚お支払いさせていただきました。」
「ポンポンオラン4000個買えるよぉ……。」
キラキラと目を輝かせながら、ミカミさんはポツリと言った。
「ポンポンオランで換算しないでくださいミカミさん。」
「はっ!?む、無意識だったよ……。でもでも、これだけお金があれば、しばらくはご飯にも宿にも困ることはないね!!」
「ですね。」
「ただ、当分生活するのには事足りるとしても、キミのやりたいことを思う存分にやるには、まだまだ物足りないね。」
「まぁまぁ、少しずつ貯金してきましょう。」
そんな会話をしていると、ドーナさんがふと気になったようで質問してきた。
「その、ヒイラギのやりたいことってのは何なんだい?よっぽど金のかかる事のようだけど……。」
「この世界中の美味しいものとか、不思議なものを求めて食べ歩きがしたくて。」
この世界でやりたいことというのをドーナさんに話すと、彼女は一瞬ポカンとした表情を浮かべるが、その次にはくつくつと笑った。
「良いじゃないか、アタシはそういう目標嫌いじゃないよ。でも、それをやるには本当に膨大な金が必要だねぇ。」
そう言ってドーナさんは、また溜まっている依頼書がまとめられたファイルを見せてくれた。
「さ、次はどの依頼をやるんだい?どれでも好きなやつ選んで良いよ。」
「そうですね……ミカミさん、どれにします?」
「どれでも良いと言ってくれているのだから、ここは遠慮なく金額の大きいやつを受けようじゃないか。」
パラパラとファイルを捲って一つ一つの依頼を確認していくと、一番最後のページに最も報酬金の多い討伐依頼があった。その報酬金は、驚くべきことに
「おや?これだけ報酬金がとんでもないね。しかも昨日見たときにはなかったと思うけど?」
「あぁ、その依頼は今日舞い込んできたやつだよ。報酬金額に見合った、めちゃくちゃ厄介な依頼さ。」
「討伐目標は……
もうそれだけでヤバそうな感じがビンビン伝わってくる。こういう名前がついてるってことは、つまりそういう事なんだと思う。
「もし、それを受けるっていうんなら、監督としてアタシも同伴する。それぐらい危険な奴なんだ。」
「え、ドーナちゃんがついてきてくれるの?」
「あぁ、いらない心配だとは思うけど……一応ね。」
「じゃあ受けよう受けよう柊君!!やったじゃないか、実質
「…………。」
ミカミさんに呆れているのか、ドーナさんはその言動に対しては何も言わなかった。でもエールを飲んでいたからだろうか?少し表情が赤かった気がする。
結局その依頼を受けることにしたので、明日ドーナさんと依頼についての打ち合わせや事前準備などを一緒に行う約束をして、俺とミカミさんはギルドを後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます