第10話 魔物ハンターギルド
ミカミさんに言われた通り通りの一番奥にある大きな建物の前までやってくると、垂れ下がってる看板には見たことのない文字が書いてあるが、俺はなぜかそれが普通に読めた。
「魔物ハンターギルド?」
「おっ、あの看板の文字が読めたという事は、言語理解のスキルも問題なく機能しているね。言語理解のスキルはこの世界の言語すべてを理解し、読み、書き、話すことできるスキルだよ。」
「めちゃ便利じゃないですか。」
「私からのギフトは、こっちの世界で生きるのに必ず役立つものだと言っただろう?何一つ無駄なんてないのさ。っとさてさて、早速中に入ろう。ゴブリンの耳を売るんだ。」
半開きになっている大きな扉をくぐって中に入ると、中はいろんな人たちでごった返していた。その人たちのほとんどが普通に武器を携帯している。
「なんか改めてここは日本じゃないんだなって感じました。」
「この世界には銃刀法は無いからね。アレが普通さ。」
人の波にのまれながら、何とか数ある受付の中から魔物の素材買取の受付を見つけだしてそこの列に並んだ。すると、長い列にも関わらずスルスルとスムーズに列は進んでいき、すぐに俺の番が回ってきた。
「こんにちは!!魔物の素材の買い取りでよろしいですか?」
魔物の素材買取の受付にいた女の人はとても元気で明るく対応してくれた。
「あ、そうです。これをお願いしたいんですけど。」
俺はゴブリンの耳でいっぱいになった袋を差し出した。
「こちらはゴブリンの耳ですね。今、ゴブリンの耳は買取価格アップ中なので……通常の買い取り価格の
「え、2倍?」
「はいっ、今ゴブリンの耳の需要がすっごい高くて、買い取り価格も上がってるんです。」
「そうなんですね。」
「そういうわけでですね、ペアで5つ買取させていただきますので~、金貨1枚をどうぞ!!」
すると、俺の目の前に金色に輝く効果が1枚差し出された。
「ありがとうございます。」
「は~い、またのご利用お待ちしてま~す!!」
その金貨を握りしめて、俺はミカミさんと一緒に魔物ハンターギルドという場所を後にした。すると、俺の肩に座っていたミカミさんがぽつりと呟く。
「柊君、キミの危険察知に引っかかっているとは思うけど、後ろから怪しい2人組が後をつけてきているよ。」
「なんか嫌な感じがずっと続いてると思ったら、そういう事だったんですね。」
「どうする?」
「どうするって言われても……。」
「向こうは襲う気満々みたいだよ。」
「マジですか……。」
どうやって逃げようかと算段を企てていると、ミカミさんがこの世界のある法律について教えてくれた。
「時に柊君、この世界にはこんなルールがあってね。レベルの高い者がレベルの低い者を襲い、万が一レベルの低いほうが勝利した場合……レベルの高い者はレベルの低い者の要求を一つ飲まなきゃいけないんだ。」
「その要求ってどういう物までオッケーなんです?」
「自害や奴隷になることを誓わせること以外なら、何でもオッケーらしいね。」
そう説明してミカミさんはニヤリと笑うと、俺の後をつけてきているという2人組のレベルを教えてくれた。
「ちなみに私たちを追いかけてきている愚か者たちのレベルは
「あの、ミカミさん。俺のレベル……ついさっきゴブリンを倒して
「あぁ、だからこそあの愚か者たちもキミを狙っているんだろうね。
けらけらと愉快そうにミカミさんは笑う。
「安心してよ柊君。例えレベルの差が10倍あろうが、あんな奴らじゃキミに自らの意思で触れることさえ不可能だ。この私、天照大御神がハッキリと宣言するよ。だからとっとと奴らのお望み通り人通りのない路地に入ってあげよう。自分たちがいったい誰が可愛がっている人間を狙っているのかを思い知らせてやるんだ。」
そう言い切ったミカミさんの表情には、本当に神様なのかと疑いの目を向けたくなるほど、黒い笑みが張り付いていた。
「ミカミさんがそこまで言うなら……わかりました。」
俺は大通りから外れて、人気のない路地に入る。すると、後をつけてきていた2人組も路地に入ってくる。そして突き当りに差し掛かったところで、危険察知のスキルが背後から迫りくる危険に警笛を鳴らす。
「もらったぁっ!!」
背後から振り下ろされたナイフを体が勝手に最小限の動きで避け、反撃で襲い掛かってきた男の顎を回し蹴りで蹴り抜いた。
「ぐぉぁ……。」
襲い掛かってきた男はその一撃で白目を剥いて地面に倒れ込んだ。
「う~ん、素晴らしいカウンターだったよ柊君。顎っていう急所を狙ったのもいいね。レベル差なんか関係なく、一撃でノックアウトだ。」
「俺、自分の意思では何にもしてないんですけど……。」
俺の肩でミカミさんが今の回避からのカウンターを誇らしそうにべた褒めしている。
「う、嘘だろ……天地がひっくり返っても、レベル3の奴にビリーはやられるほど弱くはねぇ。ど、どうなってやがる。」
相方がやられて、狼狽える男へとミカミさんは挑発するように言った。
「おやおや、レベル差が10倍もあるのに恐れをなしているのかい?蛮族なのに随分と小心者のようだね。まぁ所詮、レベルが低い者にしか喧嘩を売れない小物ってわけか。」
「~~~っ!!なめんナァッ!!」
その挑発は俺でも同情するほどに男の心を抉ったらしく、男は激昂して腰に差していたマチェーテのような大きな刃物を抜いて襲い掛かってきた。
「そうそう、そう来なくっちゃ。」
挑発の効果が抜群だったことに、ミカミさんは黒い笑みを浮かべる。マジでこの人本当に神様なのかなぁ……。
そう疑問に思っている間にも俺の体は勝手に動き、大振りの刃の振り下ろしを躱して、開いていた男の股を勢いよく蹴りあげていた。
「くぉぉぉぉぅふ……。」
当然、男は白目を剥いて股間を押さえながら地面に倒れ込んだ。これには、やった俺自身ひゅっとするモノがあった。そんな俺の横でミカミさんはゲラゲラと笑い転げそうになるほどに笑っている。
「あ~っはっは!!うっひゃ~、ずいぶんイイのをもらったねぇ~。彼、この先大丈夫かな~?」
「ミカミさん、失礼なことを承知で聞くんですけど、悪魔っぽいとか言われません?」
「おや、よくわかったね?よ~く黒井君とかには言われてたよ。『上司に向かって失礼だゾ♪』って何回黒井君の股間を蹴りあげたかな……。」
黒井さんがそう言いたくなる気持ちもよくわかる……。この人のこういう面は本当に悪魔らしい振る舞いなんだから。
「さてさて柊君、このバカ2人組が気絶してる間にガチガチに拘束してしまおう。こんな路地裏に都合よく縛れそうな縄も落っこちてるからね。」
ミカミさんは俺の肩から飛び降りると、背中の羽根でパタパタと飛んで、路地裏に落ちていた長い縄の端っこを引っ張ってきた。
そしてミカミさんの教えのもとに2人のことを縄で拘束していると、レベルアップの通知画面が表示された。
『レベルアップに必要な経験値を満たしたためレベルが上昇し、レベル10になりました。レベルアップしたためステータス情報が更新されます。』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます