第8話 ステータスオープンandエンカウント


 ステータスオープンと唱えると、俺の前にたくさんの文字と数字の書かれた画面が表示された。



《現在のヒイラギクレハのステータス一覧》



レベル 1


種族 人間


年齢 23歳


職業 料理人


状態 健康


体力     100

魔力     10

攻撃力    20

防御力    25

魔法防御力  10

素早さ    17

運      MAX


付属加護『女神イリスの加護』


スキル


・料理   Lv6



パッシブスキル


・危険察知

・魔力適応

・肉体強化

・言語理解

・自動回避・反撃

・超再生

・毒・呪い無効

・想像魔法





 その画面に目を通していると、ミカミさんは一つ一つ説明してくれた。


「まずという概念から説明していこうか。この世界には、自分の成長につながる行動をするとというものが自分の体に溜まっていく。それが一定値に達すると、レベルが上がってステータスとかが上昇するんだ。」


「よくあるRPGっぽいですね。」


「それと全く同じだよ。あと体力とか魔力とかは、今の自分の身体能力的なものだと思ってくれればいい。」


「なるほど。」


「次にスキルなんだけど……これはねぇ、説明することが多いなぁ。心して聞いてよ?」


「わかりました。……ん?なんだ?」


 ミカミさんがスキルについての説明をしようとしたとき、俺は右の方向から何か嫌な気配を感じ取った。直後、何かキラリと光るものが飛んできた。


「なんだぁっ!?」


 自分がその場から避けようする意思よりも早く体が動き、こっちに飛んできた光る何かを手で鷲掴みにしていた。


「これは矢?」


 その一連の流れを見ていたミカミさんは満足げに頷いた。


「うんうん、危険察知と自動回避・反撃がしっかり機能してるね。」


「今の嫌な感じが危険察知ってやつですか?」


「その通り、でキミが避けようって考える前に体が最善の動きで攻撃を避けようとしたのが自動回避。それで……。」


 ミカミさんが説明している最中に、俺はダーツを投擲するようにこちらに飛んできた矢を投げ返していた。それは弧を描いて矢が飛んできた方向へと戻っていく。


「今のが自動反撃。攻撃に対して勝手に反撃するスキルだね。」


 そうミカミさんが説明してくれた直後、目の前に通知画面が現れる。


『ゴブリン♂を一匹討伐しました。』


「あ、なんかゴブリンを倒したって通知が来ました。」


「うん、どうやらさっきの矢を放ってきたのはゴブリンだったらしいね。そいつがキミのスキルの反撃で死んだ。」


 すると、立て続けに違う通知が来る。


『レベルアップに必要な経験値を満たしたためレベルが上昇し、レベル2になりました。レベルアップしたためステータス情報が更新されます。』


「今度はレベル2になったって通知が来ました。」


「ん、話が早いね。今みたいにゴブリンを倒したりしても経験値は入るんだ。強ければ強い相手を倒すほど経験値は多くもらえるよ。」


「なるほど。」


 ミカミさんこの世界の理についての説明を受けていて、一つ疑問に思ったことがある。それを聞いてみることにした。


「なんでミカミさんは、この世界にそんなに詳しいんです?」


「もちろんイリスちゃんから情報を共有してもらったからさ。ナビゲーターなのに無知だったら意味がないだろう?」


「まぁ、そうですね。」


「さ、今度は死んだゴブリンの死体を確認しに行こう。」


「えぇ!?死体を見に行くんですか!?」


「気乗りしないかい?」


「そりゃあ……動物の死体とかでも近寄りたいっては思いませんよ。」


「でもこの世界では倒した魔物の体の一部を持って帰れば、お金に交換できるんだよ?」


「そんなシステムが……。」


「はっはっは、なぁにそんなに気負いするモノじゃないさ。キミは毎日のように死んだ魚をさばいていただろう?それと何も変わらないよ。」


 ミカミさんにそう言われて、俺はさっき矢の飛んできた方向へと歩みを進める。すると目先で緑色の肌の小人が頭に矢を受けて死んでいた。


「あれがゴブリン……。」


「そうだよ。え~っと、ゴブリンはどの部位が一番お金になるんだったかな。」


 するとミカミさんはどこから取り出したのか、これまた妖精サイズの分厚い辞書のようなものをパラパラと捲っていく。


「あっ、あったあった。ゴブリンの一番お金になる部位は~、だね。」


「……?」


「うん、なんか薬の材料になるらしいよ。せっかくだし今回は両方行こっか。」


「いただくって?」


「もちろん、あのゴブリンの腰に差してある短剣を使ってんだよ。あ、もちろんキミがやるんだよ?私はあんな重いもの持てないからね。」


「か、簡単に言ってくれますね。」


「大丈夫さ、魚と一緒。これは魚だと思い込むんだ。」


「はぁ~……わかりました。」


 意を決して、俺はゴブリンの腰に差してあった短剣を引っこ抜くと、一思いにゴブリンの両耳を切り取った。


「流石、包丁さばきは魂に染みついてるね。」


「で、これどうするんです?」


「町まで持って行こう。ほら、入れ物もゴブリンの腰にぶら下がってるよ。」


 ミカミさんに言われるがまま、俺はゴブリンの腰にぶら下がってた小さな革袋を取って、それを開いてみた。すると中には小さな紫色の木の実がいくつも入っていた。


「柊君、試しにその木の実を一つ食べてみてくれないかい?」


「これをですか?」


「うん。別なスキルの確認をしたいんだ。」


「……わかりました。」


 その紫色の木の実を口の中に放り込んで噛んでみると、イチゴみたいに甘酸っぱくて意外と美味しかった。


「イチゴみたいな味で意外と美味しいですよ?」


「ん、そうかそうか。毒耐性もしっかり機能しているようだね。」


「え?」


「その木の実……実は普通の人間が食べたら痺れて動けなくなるが含まれてるんだよね。」


 あっけらかんとした様子でとんでもないことを言ったミカミさん。


「なっ、何てものを食べさせてるんですかっ!!俺のこと殺そうとしてます!?」


「ははは、そう怒らないでほしいな。キミ自身……本当に毒耐性が機能しているのか確認はしておきたいだろう?」


「まぁ確かに……確認はしておきたいですけど。」


「それに、キミを殺すようなことは、天照大御神という名に誓ってしないよ。安心してくれ。」


 そう真剣な表情になって言ったミカミさんの言葉は怖いほどに信用できてしまう。これもミカミさんが本当に神様だからなのかな。


「さ、次に魔物に襲われる前に町に向かって歩き出そう。によると、町はここから2㎞先だ。」


「それさっきも聞きましたよ。」


「おや、そうだったかな?」


 こっちの世界に来ても、相変わらずおちゃらけているミカミさんを肩に乗せて、ミカミナビゲーションというものに従って町を目指すのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る