第一章 新たな生と異なる世界

第7話 ようこそ異世界ハオルチアへ


 次に俺が目を覚ますと……どこかわからない花畑の真ん中に横たわっていた。体を起こして周りを確認してみると、とても広い花畑の中心に俺は居たらしい。


「服もいつの間にかちゃんと着せられてる。」


 今思えばさっきは裸だったな……。よくわかんない状況が続いたから、そんなことすらも気にする余裕がなかったけど。


「ここがイリスさんの言っていた世界……なのか?」


 ここがどこなのかを理解する間もなく、俺の前に通知画面が表示された。


『天照大御神からのギフトが開封されます。』


 そう書かれた画面が表示されたあと、ズラリと色んな言葉が新たに画面に表示されていく。


『危険察知、魔力適応、肉体強化、言語理解、自動回避・反撃、超再生、毒・呪い無効、想像魔法。以上8つのを獲得しました。』


「は、はぁ……。」


 スキルというものを手に入れたと画面が表示されたあと、追加でもう一度画面に表示されていた文字が切り替わる。


『天照大御神のギフトによって獲得したスキルは、どんな状態、状況においても常に効果を発揮します。この効果の発動を妨げることはできません。』


「う〜ん?ま、まぁとにかく色んなスキルってやつが、常に発動しているって考えれば良いのかな。」


 そのスキルというものが、どういうものなのかを理解する間もなく、また画面の文字が切り替わった。


『ギフトから1つのアイテムを入手しました。』


「アイテム?」


 疑問に思っていると、目の前に天からプレゼントボックスのようなものが降ってきて、勝手に紐がシュルシュルと解かれていく。


 すると、その中から小さい何かがぴょんと飛び出してくる。


「やぁやぁ柊君!!無事にイリスちゃんの世界で新しい生を受けられたようだね。」


「いぃっ!?み、ミカミさん!?」


 プレゼントボックスから飛び出してきたのは、人差し指ほどの大きさのだったのだ。妖精をモチーフにしているのか、ご丁寧に透明な羽も生えている。


「な、なんでここに?」


「なんでって、約束したじゃないか。ってね。」


「こ、言葉の綾みたいなものかと思ってましたよ……。てっきり日本から見守ってるのかと思ってました。」


「もちろん向こうにも私は居るよ?向こうが本体。こっちの私は、キミの監視役……兼ナビゲーターみたいなものだと思ってくれれば良い。」


「は、はぁ……なるほど。」


 理解が追い付く間もなく、ミカミさんは俺の肩にちょこんと座ってきた。


「ただ残念ながら、分身体の私には邪なものを祓う力はなくてね。本当にキミをアシストするようなことしかできないんだ。」


「いえ、むしろ知ってる人が近くにいてくれるだけで少しホッとしました。」


「そう言ってくれるとありがたいよ。さて……じゃあ、そろそろこの世界について少しだけ説明をしようか。」


 すると、ミカミさんは手慣れているような手つきで、俺の目の前に別の通知画面を表示した。そこにはこの世界の名前と地図が書いてある。


「この世界の名前は。地球と同じように丸い球体状の星だね。イリスちゃんの言っていた通り、地球とは違って科学じゃなく魔法が進歩して文明が発達した世界。」


「なんかまだそんな実感はわかないですね。」


「まぁ、ここは近くの町から少し離れている場所だからね。突然町中にキミが倒れてる状態で現れたら……不審がられてしまうだろう?」


「まぁ確かに。」


「ちなみに、今私たちがいるのは~……。」


 ミカミさんはスマホをピンチアウトする時みたいに画面を操作して表示されていた地図を拡大すると、その画面にピンと赤い点をつけた。


「この赤い点のついてる場所。一番近い町は2㎞ぐらい先かな。」


「結構歩かないといけないんですね。」


「うん、まぁでも人目につかないところに~ってイリスちゃんが配慮してくれた結果だから、文句は無しだよ柊君。」


 そう言ってミカミさんはまた画面を切り替えた。


「今度はさっき私がプレゼントしたスキルの説明に移ろうか。」


「お願いします。」


「この世界には魔法の他にスキルといって、自分の技量や、特殊な特徴なんかがスキルとして獲得できるようになってるんだ。さっきのは私が強制的にキミの体に刻み込んだスキルだけど、そのほかにも、柊君の場合、料理ってスキルがもともとあるんじゃないかな?」


「なるほど……なんか本当にゲームの中の世界みたいな感じですね。」


「そうそう、そんな感じで考えればわかりやすいよ。じゃあスキルの説明をしたところで、今キミが何のスキルを持っているのか……実際に確認してみようか。」


 そう言ってにっこりと笑ってミカミさんは俺の方を見てくるが、どうやって確認するのかを全く知らない俺は首を傾げるしかなかった。


「あぁ、そうか。すまない私の説明不足だったね。自分のことを確認したいときは、って口に出すんだよ。」


「す、!!」


 そう唱えると、俺の目の前にずらりといろんな文字や数字が、事細かに書かれた画面が表示された。


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