キックバトルバードの白湯スープ


 解体して残ったキックバトルバードの骨を一度熱湯にくぐらせて、微細な血や表面上のぬめりなどを完璧に取り除く。


「そしたらこのキックバトルバードのガラと香味野菜をいくつか鍋に入れて、ゆっくりと火にかける。」


 出汁を引いている間に、今回の料理で使う野菜などを用意していこう。


「使う野菜は正直なんでもいいんだけど、今回はシンプルに白菜とキノコをいくつか……それとミクモから買った豆腐をいれよう。」


 切りものをしていると、キックバトルバードのステーキを食べ終えたグレイスが、出汁を引いている鍋の周りをぐるぐると飛び回っている。


「美味しそうな匂いがプンプンしてるっす~。この空間幸せっす~。」


「グレイス、涎は出汁にならないから入れないようにするんだぞ?」


「わかってるっす~。」


 そうして野菜と、今回のメイン食材であるキックバトルバードの肉を食べやすい大きさに切り分けた後、出汁の確認に向かった。


「ん、アクは思ったよりも少ないな。美味しい脂まで取り除かないように、慎重にアクだけを取り除こう。」


 丁寧にアクを取りながらしばらく煮込むと、黄金色の脂が表面に浮きあがった、少し白濁したスープが完成した。


「ここからは俺のアレンジだ。」


 香味野菜を取り出して、スープの中にキックバトルバードのガラだけ残したら、鍋底に沈んでいるそれを粉々に砕いていく。鶏白湯スープを作る工程と同じだな。


「普通のニワトリよりも骨が硬いから砕くのが大変だな。」


 だが、ここで骨を砕くことによって、骨の中にある旨味まで全てスープの中に溶けだすのだ。手抜きはできない。そうして念入りにキックバトルバードの骨を粉々にした後、一度ポコッとスープを沸かせたら、細かい骨がスープに残らないように、目の細かい布を使って裏漉ししていく。


「よっし、キックバトルバードの白湯スープ完成っと。」


 真っ白に白濁したそのスープを味見してみると、上品ながらも力強く濃厚なキックバトルバードの旨味が口いっぱいに広がった。


「はぁ~……良い出汁だ。これだけでも十分美味しいけど、少しだけ塩を入れて味を引き締めようか。」


 白湯スープに気持ち程度の塩を入れて、味を引き締め、今一度味見して確認する。


「……よし、完璧だ。それじゃあ仕上げに入ろう。」


 キックバトルバードの白湯スープが完成したところで、俺は今日の夕食の仕上げに取り掛かるのだった。

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