キックバトルバードの味は…


 ハウスキットを展開し、みんながぞろぞろと中に入って行く。そしてソファーに腰掛けると、みんな一様に大きな安堵のため息を吐いていた。


「はぁ~、馬車の乗り心地は最高だけど、座るならやっぱり動かないところがいいねぇ。シアとメリッサは疲れてないかい?」


「全然大丈夫っ!!」


「まだまだ…げんきいっぱい。」


「子供はやっぱり元気ね。」


 ドーナとランの膝の上に座ったシアとメリッサの2人は、まだまだ元気が有り余っている様子だ。エルフの国で、マドゥと一日中走り回って遊んだりしていた影響かな。


「さってと、みんなはここで休んでくれてていいぞ。俺は今からあのキックバトルバードを調理してみる。」


「どんな味なのか楽しみね。」


「あぁ、めちゃくちゃ美味しかったらいいんだけどなぁ。」


 そう切に願いながら、俺はコックコートに着替えて厨房に向かって、まずは一匹……羽根をむしり、内臓を取り除いたキックバトルバードをマジックバッグの中から取り出してみた。


「さてさて、まずは部位ごとに解体してみようか。」


 普通の鶏よりは遥かに大きいし、たくさん肉は取れそうだな。


 そしてもしもの時のためにレヴァを使って解体を進めて、胸肉や背肉など部位ごとに分けてバットの上に並べていく。際立つのはやはり発達したモモ肉だな。


「こいつは食いごたえがありそうだな。」


 まずはどんな味なのか試食してみようか。どんな料理にするのかはそれから考えよう。


「味付けはシンプルに塩と胡椒だけにして……。」


 大きなモモ肉に塩と胡椒で味をつけてフライパンで焼いてステーキにしてみた。それを俺の分を一切れだけ切り分けた。


「さて、あとは……今日の功労者にこれを食べてもらおうかな。グレイス~?」


 そうグレイスのことを呼んでみると、すい~っとこちらにグレイスが滑空してきた。


「自分を呼んだっすか?ヒイラギさん。」


「そう、今日頑張って馬車を引いたグレイスには、キックバトルバードのステーキを一番最初にプレゼントだ。」


「ふぉぉぉぉぉっ!!やったっす~!!」


 ステーキが盛り付けられた皿が置いてある台の上に降り立つと、グレイスは涎を拭いながら、キックバトルバードのステーキを両手で持った。


「いただきま~っす!!」


 がぶっと大口でかぶりつくと、そこからじゅわっと肉汁が溢れ出した。


「ん~~~まいっす!!脂が甘くて最高っすよ~!!」


「そうか、それは良かった。」


 俺も一切れステーキを食べてみると、その味に驚いた。


「ほぉ……これは美味い。野性味があるのかなって思ったけど、そうじゃなくて地鶏みたいに優しくて上品な味だ。」


 それに食感もいい。噛むとプリッとしてて口の中で繊維がほぐれていくようだ。


「良し、コイツを使って作る料理は決まったぞ。」


 そうと決まれば、早速仕込み開始だ。



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