キックバトルバードの報復
馬車が囲まれていることを悟ると、ドーナやラン、レイ、師匠までもが馬車から降りて四方に散らばった。
「ドーナ、そういう情報は前もって欲しかったかもな。」
「何言ってんだい、最後までアタイの話を聞かずに飛び出していったのはヒイラギだろ?」
「……反論の余地もございません。」
反省していると、ランがこちらに届く声であることを問いかけてきた。
「ねぇヒイラギ〜、この鳥美味しいのかしら?」
「わからん、でも市場に出回ったことはあるらしいから、もしかすると……。」
「はいは〜い、つまり美味しいかもってことね。ワタシ、鳥の料理は大好物なんだから……一匹も逃さないわよ。」
俺と同じく、目の前のキックバトルバードが最早食材にしか見えていない様子のラン。そんな彼女に、ドーナが一声かけた。
「ラン、久しぶりにどっちが多くこいつらを倒せるか……勝負するかい?」
「いいわね、臨むところよっ!!」
するとランとドーナは自分から、キックバトルバードの群れの中へと突っ込んでいく。
まぁ、あの2人なら問題はないだろう……。そう安心して見守っていると、師匠にポンと肩を叩かれた。
「では私達は、あの2人をすり抜けてきた奴らを相手にするか。」
「ワシの魔法で全て消し去っても構わんぞ?」
「食べたかったら頑張って気絶させるなりしてくれ。」
「むぅ、そう言われると弱いのじゃ。美味いものは食いたいしのぉ……。」
うむむ……と唸っているレイへ、一匹のキックバトルバードが蹴りを繰り出した。しかし、彼女に届く前に何か硬いものに阻まれて、その蹴りはビタリと止まる。
「悩んでいる時に蹴りを入れようとするとは、なかなかどうして無礼な奴じゃな。」
レイは閉じていた目を薄く開き、そのキックバトルバードを睨みつけると、次の瞬間キックバトルバードの首と胴が、まるで空間を切り取られたように分かれた。
それを見ていた師匠が目を輝かせる。
「そういう風にカッコよく、華麗に魔法を使えれば良いのだがなぁ。」
「シズハは我が主と違い、魔力の扱いが下手糞故に無理じゃな。」
「ぐぐ……仕方がないだろう。私は柊と違って、この世界で魔法に触れた期間が短いのだから。」
「それは言い訳にはならんのぉ〜。才は才じゃ。」
師匠の目の前でこれでもかと、色々な魔法を使ってキックバトルバードを倒してみせるレイ。その横で師匠は悔しそうにしながら、自分の武術でキックバトルバードを倒していた。
うん、これは俺の出番はないな。
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