vsキックバトルバード


 キックバトルバードの前に立つと、向こうもすっかりやる気満々のようで、ムキムキの足をシュンシュンとこちらへ向けて軽く蹴りだしている。


「悪いが、俺にはお前はもう食材にしか見えない。俺達の旅路を邪魔するなら、きっちり調理させてもらうぞ。」


 マジックバッグの中からレヴァを取り出すと、次の瞬間……まるで真っ赤な日本刀のような形に変わった。


「なんか、普段調理に使うときよりも、もっと真剣らしいというか……雰囲気がちょっと違う?」


 手にしているレヴァの雰囲気がいつもと少々違うことに違和感を覚えていると、その隙を見計らってキックバトルバードは一気にこちらに向かって突撃してきた。


「クエッ!!」


「うおっと!!」


 鞭を打った時のような音を鳴らしながら、俺の顔の横をキックバトルバードの足が突き抜けていく。


「危ない危ない。油断は大敵だな。」


 するりと流れるように体勢を立て直し、レヴァをキックバトルバードへと向けて構える。


「剣はあんまり扱ったことがないんだよなぁ。」


 いや、この際……本当にこいつを食材として俺の脳に認識させてしまうか。その方がきっとレヴァを包丁のように扱えるはず。


「ふぅ……やるか。」


 意識を戦闘から調理へと切り替え、再びキックバトルバードを見た。すると、こちらの雰囲気が変わったことを察したのか、やつは少し警戒していたが、すぐに自慢の足を信じて特攻を仕掛けてきた。


「まずは首を落とす。」


 生きた鳥を絞めるのには、残酷だが首を落としてしまうのが最も手っ取り早く苦しみも少ない。苦しまないように……一発で。


「ふっ……。」


 こちらに特攻してくるキックバトルバードの動きに合わせて、奴の進行方向上にレヴァを置いておくと、止まりきれずにレヴァを置いていた場所を通過してしまい、奴の首と胴体が分かれた。

 胴体の方をキャッチして血抜きのために逆さにして、首が落ちてくるのを待っていると、シュッと何かが宙に舞っていたキックバトルバードの首を持って行ってしまった。


「あ、今のは……。」


 一瞬だが目視できた黄色と黒の縞模様……おそらくはメリッサのハチが持ち去っていったのだろう。多分食べるために……。


「ヒイラギさん、それどうするっすか?」


「食べてみようと思う。この太もものところとか美味しそうだし……。」


「焼いたら美味しそうっす……。」


 グレイスは調理されたキックバトルバードの後の姿を想像して涎を垂らしてしまっている。すると、窓から顔を出して一部始終を見ていたドーナが声をあげた。


「ヒイラギ、そいつ仲間意識が高くて、一匹でも仲間がやられたら復讐に残りの仲間が集団で襲ってくるよ。」


「え?」


 ドーナのそんな言葉を聞いている最中にも、俺たちは大量のキックバトルバードの群れに囲まれてしまっていた。


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