寒さに負けず
グレイスのことを温めるために、俺はフレイムブレスを使って試行錯誤を繰り返していた。少しでも出力の調整をミスってしまうと、大爆発するかもしれないから扱いは慎重に……。
「イメージはストーブ……いや、太陽みたいに熱を放出する感じがいいかな。」
俺は手のひらの上でフレイムブレスの形を変えて、丸い球体にした。
「で、これを少しずつ出力を強くして……。」
魔力を少しずつ多く流していくと、火の玉がどんどん大きくなる。でもまだこれじゃ熱が一点に集まってるだけ。今からこれの熱を少しずつグレイスに送る。
「少しずつ、ゆっくりだ……ハリケーンブレス。」
出力を調整してフレイムブレスの球体にハリケーンブレスによる風を送り、その風をグレイスまで送り届ける。
「おっ?なんか背中があったかくなってきたっす。」
「ちょっとグレイスが温まれるように、試行錯誤してみたんだけど……いい感じか?」
「めちゃいいっす~。体がぽかぽかで動くっす!!」
「ただこれ魔力の調整が難しくてな。暴発したらすまん。」
「ヒイラギさんの魔力で暴発なんてしたら、自分消し飛ぶっすよ!?」
「だから、めちゃくちゃ今真剣になってやってるんだよ。」
「温まるのは最高っすけど、消し飛ばされるのは勘弁してほしいっすよぉ~。」
そんなやり取りをしながら馬車をグレイスに引いてもらっていると、目の前に足の筋肉がムキムキに発達した白色のダチョウのような鳥が現れて道を遮ってきた。
「ヒイラギさん、目の前に魔物っす。」
「わかってる。」
グレイスの姿を見て怖気ずくどころか、羽根を大きく広げて威嚇して来ている。どうすべきかと一瞬悩んでいると、馬車が泊ったことに異変を察知したドーナが窓から顔を出した。
「どうかしたかい?」
「ドーナ、なんか魔物が道を塞いででさ……。」
すると彼女は道を塞いでいる魔物を見て、すぐにその魔物の名前を口に出した。
「
「強いのか?」
「普通のやつなら何の問題でもないんだけど、北の方に生息してる個体は脚力がとんでもなくてねぇ。冒険者だと金級のぐらいの実力がないと倒せないよ。」
「……ちなみに味とかってわかるか?」
「いや、生憎アタイは食ったことは無いねぇ。何回か市場に足の肉が出回ったってのは聞いたことあるけど……。」
「市場に出回るなら食べれるんだな。よしっ!!」
ぴょんと運転席を飛び降りて、俺は道を塞ぐキックバトルバードの前に立った。ドーナが最後何かを言っていたことを聞かずに……。
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