盛大な見送り


 翌朝、カリンからもらった屋敷の前でみんなで集合していると、まだ朝早いというのにたくさんのエルフたちが集まってきた。


「ついに行ってしまわれるのですね、あなた様……。」


 そう悲しそうにつぶやいたのはフィースタだ。彼女の助けが無かったらエルフの国でお菓子を売るなんてことはできなかっただろうし、何より俺のことを保護してくれた恩人だ。彼女には感謝してもしきれない恩がある。


「またすぐ帰ってくるよ。ちょっとの別れさ。」


「そうですね……。いつか帰ってくるあなた様を待つ日々を私は過ごしてお待ちします。」


「ははは、そんなに悲しまなくたっていいだろ?またすぐに帰ってくるって。」


 フィースタのほかにも社員のエルフたちから今生の別れのような言葉を投げかけられるが、そのたびにまたすぐに帰ってくると言って、みんなと約束を交わすことになってしまった。


 そしてエルフたちに見守られている中、俺はグレイスにエノールに作ってもらった馬車の装備を着けていく。オーダーメイドで尚且つしっかりと採寸をしてもらったおかげで、どの装備品もパチッとグレイスの体にぴったりはまった。


「着け心地はどうだグレイス?」


「最高っす!!前の馬車とは比べ物にならないっすねぇ~。」


 そう言ってほっこりとした表情を浮かべているグレイス。どうやら着け心地は最高らしい。


「ようし、じゃあみんな乗り込んでいいぞ。」


「シアいちば~ん!!」


「しあちゃん…まって。」


 真っ先にシアとメリッサの2人が馬車の中に駆け込んでいく。その後に続いてドーナ達が乗り込んでいった。そして俺は以前の馬車と同じく、グレイスを操る運転席に腰掛けた。


「それじゃいよいよ出発だな。グレイス、行けるか?」


「任せてほしいっすよ~!!今こそ自分がここにいる意味を見せる時っす!!」


 グレイスが一歩踏み出すと、ゆっくりと馬車が動き始める。するとシアとメリッサが馬車に備え付けられた窓を開けて、寂しそうにしているマドゥに手を振っていた。


「マドゥく~ん!!またね~!!」


「まどぅ…またね!」


「シアちゃん、メリッサちゃん!!僕、帰ってくるの待ってるから!!」


 涙をボロボロと流して手を振るマドゥを宥めているカリンが、こちらに手を振りながら一言声をかけてくれた。


「帰ってくるのを待っているぞ。。」


「ありがとうございます。じゃあ、行ってきます。」


 たくさんのエルフたちに見送られながら、俺たちの美食を巡る旅は幕を開けた。


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