社員みんなにボーナスを
2度の採寸によって心がボロボロになったグレイスだが、俺の分のお菓子もあげると言ったらすぐに元気を取り戻して、お店の中にあるイートインスペースで、バクバクとお菓子を食べていた。
「じゃあみんなはここでお菓子を食べててくれ。」
「ヒイラギはどこかに行くの?」
「ちょっと社員の皆に渡してこなきゃいけないものがあるから、渡しに行ってくるだけさ。帰りの時間が合わないだろうから、先に帰っててくれ。」
「わかったわ〜。」
そして、お店を出た後に今度は孤児院へと向かう。すると、やはり道の途中で行列の最後尾が見えてきた。
「あ、社長はっけ〜ん!!」
「おっ、今日はモミジが列調整の役か。」
「そうそう、昨日はお母さんだったんだけどね〜。で、なになに?お菓子買いに来た?」
「いや、今日はこれを渡しに来ただけだ。」
さっき社員のエルフに渡したものと同じ封筒を手渡した。
「これ、みんなの名前が書いてあるけど何?」
「営業終わりにでもみんなに渡しておいてくれ。」
「今中身見てもいい?」
「後のほうが良いと思うぞ〜?」
「じゃあ後でみんなで見よ〜っと。」
「そうしてくれ、じゃ俺は今度は人間の国に行ってくるよ。」
「あぇっ?何も買っていかないの〜?」
「俺が買うよりも、他のお客さんに買ってほしいからな。じゃ、後の営業も頑張ってくれ。」
また別れを告げて、今度は転送の結晶でエミルへと飛んだ。エミルに来ても、行くところは決まってる。
「……またなんか色々付け足されたなアイツ。」
目先に見えるバフォメットは、以前見た時よりもさらに多くの可愛さを押し出すためのグッズを装備させられていた。
それをながめながら、行列に並んでいるとこちらに気づいたらしいバフォメットが地面を鳴らしながら近付いてきた。
「今日はまた珍しい客が来ているな。」
「ちょっと社員の皆に渡すものがあってな。お前に任せてもいいか?」
「任されよう。」
俺はバフォメットにハリーノ達のボーナスが入った封筒を手渡した。
「ちなみに落としたら……ミースのとこに請求書がいって、お前の賃金が引かれるかもしれないから、慎重にな?」
「う、うむ。任された。」
バフォメットにそう釘を刺しながら言ってやると、お金というものの大事さを理解し始めた奴は、きちんと確認しながら、それを巨大なエプロンの前ポケットにしまった。
「俺はしばらく旅に出てくるからな。次にお前と会うのは、しばらく先になる。」
「なに、数百年旅に出るわけでもないのだろう?たった数年待つぐらいダンジョンで慣れているわ。」
「はは、そうだったな。」
そして信頼できるバフォメットにハリーノ達のボーナスを預けてから、俺はエルフの国へと戻るのだった。
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