オーダーメイドの馬車を作るために


 ランとレイ、2人の冬服も決まったところで、今度は獣人族の国までやってきた。そして真っ先に向かったのはエノールの工房だ。


「お邪魔するぞ~。」


「おっ、来たなぁ勇者様。」


「馬車の採寸にグレイスが必要だと思ってな。」


「……馬車をワイバーンに引かせるのか?そのちっこいのに?」


「自分もうワイバーンじゃないっす!!れっきとしたドラゴンっす!!」


 ぷんすかと俺の手の中で怒りながら必死に訴えかけるグレイス。


「今はこんな感じで手の中に納まるような大きさだけど、これはスキルでちっちゃくなってるだけで、本当は滅茶苦茶デカいぞ?」


「そ、そうなのか。じゃあ裏で元の大きさにデカくなってもらうか。それから採寸に移るとしよう。」


 エノールの後ろをついて行って、工房の裏手にある少し広い敷地にやってきた。


「よし、デカくなっていいぜ。」


「じゃあグレイス、元の大きさに戻ってくれ。」


「了解っす!!」


 そしてグレイスが地面に降りて、ググっと体に力を入れ始めると、どんどんグレイスの体が大きくなっていく。それを眺めていたラン達がぽつりと言った。


「久しぶりにグレイスが大きくなった姿を見たけど、やっぱりいろんなところが龍らしくなったわね~。」


「うむ、まだ未熟ではあるが龍とは認められるじゃろう。さしずめ龍成り立て……といったところじゃな。」


「まぁ自分まだこの世界に産まれて30ぐらいなんで、まだまだ古参のランさん達には敵わないっすよ〜。」


 グレイスが30年……レイはエルフのカリンとかなり長い付き合いみたいだから1000年ぐらいか?


 そういえばランの年齢を今の今まで聞いていなかったような……とそんな事を思っていると、ペチンとランの腰から生えてきた尻尾で頭を叩かれた。


「ヒイラギ〜、今ワタシの年齢について考えてたでしょ〜?」


「な、なんでわかったんだ?」


「メスってそういうオスの思考には敏感なのよ〜。」


「そ、そうなのか……すまなかった。」


「主よ、そんなに知りたければワシが教えてやるぞ。ランが初めて龍集会に呼ばれるようになった年数的にじゃな……むぐっ!?」


「はいはい、あんたは余計なこと言わないの。」


 ランは腰から伸ばした尻尾でレイの口を封じ、一言も喋れないようにしてしまっていた。


 そんなやり取りをしている間に、エノールによるグレイスの採寸がとられていったのだった。


 体の隅から隅まで採寸をとられたグレイスは、終始『太ったっす……。』と言って落ち込んでいたが、帰るころには忘れているだろう……多分。

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