旅支度②


 エノールに一番大事な馬車を任せるとして、あと旅に必要なのは……と考えたとき、必要なのは人数分の寝具だという事に気が付いた。


 ハウスキットの中のテーブルやソファーを片付けて、布団を敷いて寝るにしても、今のままじゃ布団の数も足りないし、これから来るらしい寒期というものに備えて、暖かい布団を買っておかないと。


「よし、それじゃあ次は、寝具を買いに行くぞ。」


「ワタシ、旅をするならヒイラギと一緒の寝床じゃなきゃイヤよ。」


「アタイもだよ。それに他のみんなだって同じことを言うと思うよ?」


「まぁ2人がそう言うのはわかってたんだけど、寒くなった時に暖かくて厚い布団が必要だからさ。それを買いに行くってわけだ。」


「あら、それならそうと言ってくれればいいのに。ちょっと不安になっちゃったわ。」


「さ、そういうわけで暖かい寝具を買いに行くぞ~。」


 そして獣人族の国で暖かい寝具を全員分揃えてから、俺たちはエルフの国へと戻った。


「うん、よし。これで一応旅の支度は済んだかな。」


 後は、もしもの時のために食料を買い込んでおけば問題ないかな。旅の準備を整え終えて、屋敷へと戻る途中で、ランがポツリと呟いた。


「また旅に出るのもいいけど、落ち着いたらエミルにあるワタシ達のお屋敷で、ゆ〜っくり過ごしたいわね。」


「そうだな、この世界を巡り尽くしたら……あの屋敷でゆっくりしよう。」


 そうなると、俺達がいない間あそこを管理してくれる人を探さないと……。やることがもう一つ増えたな。


「もう一つ、やっておかなきゃいけないことを見つけたから、ちょっとまた出かけてくるよ。2人は休んでてくれ。」


「わかったよ。」


「気をつけていってくるのよ〜。」


「あぁ。」


 2人と別れて俺は転送の結晶を握りしめてエミルへと飛んだ。そして、真っ先にギルドへと向かう。


「ミースいるかな。」


 ギルドの扉を開けて中に入ると、そこでは相も変わらずウォータードラゴンが爆食していた。


「おっ、相変わらず食べてるなベール。」


「あ、人間さんこんにちは〜。」


「ミースどこにいるかって、知らないか?」


「ミースさんならお菓子を買いに行ってると思いますよぉ〜。」


「そっか、じゃあもうちょっとで帰ってくるかな。ここで待たせてもらっても良いかな?」


「もちろんいいですよぉ〜。」


 食べ物を口いっぱいに含みながら、満面の笑みを浮かべるウォータードラゴンの横に座り、お菓子を買いに行ったミースを待つのだった。

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