吸血酔い


 最初こそがっつくように吸血をしていたフレイだが、次第にゆっくりと味わうような吸血に変化していった。


「なんか吸血上手くなったか?最初も全然痛くなかったし。血を吸われてるけど倦怠感とかもないぞ。」


「ぷぁっ、ちょっと練習したんだよ。……ヒイラギさんが気分悪くなる吸血なんてしたくなかったし……。」


 そう言ってまたフレイは肩に口をつけるが、やはり痛みはない。体の血が抜かれれば、倦怠感に襲われたり、脱力感が襲ってきたりするが、今は寧ろ身体の中に溜まっていた疲労の塊が、吸われていくような心地良さを感じていた。


 そんな心地の良い吸血にリラックスしていると、フレイはまた俺の肩から口を離し、突然仰向けにベッドの上にパタンと倒れてしまった。


「あれ、フレイ?」


「きゅ〜っ……お目々ぐるぐる〜。お腹いっぱいだよぉ。」


 仰向けにベッドに倒れたフレイは、まるで酔っ払ったように目を回してしまっていた。


「よ、酔ってる……のか?」


 久しぶりの吸血でフレイの体がびっくりしたのか、それとも俺の体に流れる血液に何か変化が起こったのか……。


「今日はまだお酒も入ってないんだが。」


 以前、俺の体にアルコールが入っていると、自分も酔う可能性があるって言ってたが……今日はまだ飲んでない。


「まぁ、一先ず今は横にさせておこう。」


 倒れ込んだフレイを抱きかかえて、俺のベッドに正しく寝かせ、毛布を上からかけた。するとすぐにフレイは安らかに寝息を立て始める。


「一旦フレイはこのままかな。」


 軽くポンポンと彼女の頭を撫でてから、俺は服を着て1階のリビングへと向かった。


「あれ、師匠だけ?」


「なんだ、私では不満だったか?」


 リビングのソファーを独占し、ゴロンと横になっていた師匠が、じっとりとした視線をこちらに向けてくる。


「何もそんなこと言ってないじゃないですか。ドーナ達はどうしたんです?」


「あぁ、なにやらお菓子を買いに行くと言って外に出ていったぞ。」


「そうでしたか。」


 そして師匠が横になっているソファーの目の前に座ると、突然後ろから頭を鷲掴みにされた。


「柊、私のやりたいこと……見たんだろ?」


「い、今やるんですか?ドーナ達も、もう少しで戻ってくると思うんですけど。」


「ふふ、お前はアレをしてやると、他人には見せられないような表情になってしまうもんなぁ。」


 そうニヤニヤと笑いながら、師匠はポケットからあるものを取り出した……。

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