久しぶりの吸血


「えへ、えへへへ、お兄さんのお耳かき大好き~♪」


 耳かきを終えた後、膝枕の上でゴロゴロとのどを鳴らしているシアの頭を撫でていると、少し開いた扉の隙間からメリッサが羨ましそうにこちらを見ていることに気が付いた。

 シアの手を撫でている反対の手で、おいでと手招きするとメリッサは、ぱぁっと表情を明るくしてこちらにとてとてと小走りで駆け寄ってきた。


「ぱぱ…すきっ。」


「ありがとうメリッサ。明日は一緒に釣りに行こうな。」


「うん。」


「シアも一緒に行ってもいい?」


「いっしょにいこ…しあちゃんも。」


「えへへ~、一緒におっきいお魚さん釣ろうね!!」


「うん!」


 仲睦まじく笑いあっている2人の頭をわっしわっしと撫でて、しばらくゆったりとした時間を過ごした。

 

 その後、昼食の時間となり、みんなで美味しい食卓を囲んでいると、ある人物がソワソワと落ち着かない様子でこちらをチラチラと見ながらご飯を食べている。


「そんなに待ちきれないか?フレイ。」


「へっ!?あ、え、えっと……うん。」


 突然の質問にオロオロとしながらも、フレイはコクンと大きく頷いた。


「だって久しぶりにヒイラギさんが血を飲ませてくれるっていうから……。」


「最近はずっと牛乳で間に合ってたもんな。」


「牛乳も美味しいんだけどね。でも〜、ボクはヒイラギさんの味を知ってるから、どうしても……ね?」


 体をくねらせながら、俺のことをチラチラと見てくるフレイの視線は、さながら獲物を見るような目だった。


「ま、それに関しては私も同感ね。血でしか味わえない美味しさってやつがあるわけよ。」


「吸血鬼の味覚を知らないから、共感ができないけど……。まぁ、いつも牛乳だけじゃつまらないって気持ちは分かる。」


 そして昼食を食べ終えた後、自室で待っているとコンコンと扉がノックされた。


「入っていいぞ〜。」


 そう声をかけると、フレイが恐る恐る部屋の中に入ってきた。


「ヒイラギさんのお部屋に入るの久しぶりかも……。」


「そうだったっけ?」


「うん。」


 すると、フレイはクンクンと鼻を鳴らして部屋の匂いを嗅ぎ始める。


「このお部屋、当たり前だけどヒイラギさんの匂いでいっぱいだぁ……。ずっといれるかも。」


「変な匂いじゃないか?」


「お腹が減る匂いだよ!!」


「そ、そうなのか……。」


 吸血鬼的にはそういう匂いを感じ取れるらしい。


「さて、それじゃあ久しぶりの吸血……始めようか。」


「うんうんっ!!」


 上着を脱いでベッドに腰掛けると、フレイはフワフワと浮遊しながら俺の背後に回った。


「はぁ、はぁ〜っ、久しぶりだなぁ……。ヒイラギさんの美味しい血……いただきます。」


 フレイの熱い吐息をさらけ出した肩に感じると、何の痛みもなく彼女はいつの間にか、俺の肩に歯を突き立てて吸血を始めていた。


 

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