才能の発見


 水の色が変化すると、バイルがギョッと驚いた表情を浮かべた。


「おっ?おっ!?水の色が……。」


「すっかり金色に変わりましたね。こうなったら残りの野菜を投入して、じっくりと弱火で煮込みましょう。」


 残りの葉野菜等を全て鍋の中に投入し、蓋をして弱火でじっくりと煮込む。その間にもらった小魚とかの仕込みに移ろうか。


「ふぃ〜……これで一段落か。」


「何言ってるんですか、まだ魚が残ってますよ。」


「さ、魚もやるのか!?」


生物なまものは腐りやすいので、その日の内に使い切らないといけないんですよ。」


「い、一応言っとくがよ、オレは魚も触ったことねぇぞ?」


「今から慣れてもらうので問題ないです。」


「無茶苦茶言ってくれるぜ……。」


 頭を抱えているバイルの前で、魚を1匹まな板に置いた。


「今からやるのは魚の鱗を取って、内臓を取り除いて洗うって作業です。」


「お、おいおい、そんなのオレには無理だぜ?」


「難しく考えないでください。まずは俺の手本を見ててください。」


 小さい魚の鱗を包丁でカリカリとこそぎ落としてから、お腹を開き内臓を取り出してから中身を綺麗に洗う。


「はい以上です。」


「はいじゃねぇよ!?」


「何もこんな風に3枚に下ろすなんてことはしなくて良いんですから。」


「いつの間になんてことやってんだ!?」


 片手間で小魚を3枚に下ろしてみせると、バイルは目玉が飛び出す程の勢いで驚いていた。


「何も難しいことはしてませんよ。さっきみたいにやり方を真似すればできます。さ、やってみましょう。」


「ぐぐ……ど、どうにでもなれだ。」


 そしてバイルにコツを教えながら、魚を処理してもらうと……。


「で、できちまった……。」


「ね?簡単でしたよね?」


「ま、まさかオレには料理の才能があったのか!?」


「無いとは一概には言い切れませんね。」


 1匹の小魚の下処理を終えたバイルの横で、俺はもう既に半分以上の下処理を終えている。


「それじゃその調子で残りもお願いします。」


「手伝ってくれねぇのか!?」


「だって……俺はもう。」


 チラリと下処理の終わった小魚の山に視線を向けると、バイルが軽く絶望していた。


「そ、それを今……オレに教えながらやってたのか!?」


「はい。」


「や、やっぱりバケモンだぜ。」


「はいはい、口を動かす前に手を動かしましょう。まだ100匹以上ありますよ。」


 煮込んでいるスープの面倒を見ながら、小魚と格闘するバイルを見守るのだった。


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