小魚の唐揚げ
ようやくバイルが魚を全て仕込み終える頃には、空が茜色に変わり始めていた。
「や、やっと終わった……。」
「お疲れ様でした。じゃあいよいよそれを料理にしていきましょうか。」
疲労困憊といった様子のバイルに、追撃の言葉を放つと彼はがっくりと肩を落とした。
「そ、そうだった……まだこいつは料理にすらなってないんだな。」
がっくりと肩を落とすバイルに、俺はある希望の言葉を投げかける。
「大丈夫ですよ、これからの調理は簡単ですから。」
「ホントか?」
「はい、それの準備もこっちに整えておいたので。」
俺は温まった油を指差した。これは肉屋からもらった牛脂とラードを温めて溶かしたものだ。
「今からやるのは、下処理してもらった魚に小麦粉をつけて、こんな感じで熱々の油の中に放り込みます。」
小麦粉をつけた小魚を油の中に放り込むと、パチパチと軽快な音を鳴らしながら、こんがりと揚がり始めた。
「次第にでてくる泡が少なくなってくるので、そうなったら揚げ上がりです。」
「ほぉ〜……確かにこいつは手軽だな。」
まじまじと眺めていたバイルへ、俺は塩を振った魚の唐揚げを手渡した。
「試しに一つどうぞ。」
「頂こう。」
豪快に一口でバイルはそれを口の中へと放り込むと、サクサクという小気味の良い音がこちらまで聞こえてきた。
「こいつは……美味いな。小魚のくせに小骨が全く気にならねぇ。無限に食えそうだぜ。」
「でしょう?それじゃあお腹をすかせてる兵士達のために、頑張って揚げていきましょう。」
「おう!!」
そしてバイルは小麦粉をつけた小魚をどんどん油で揚げていく。その途中、彼は揚げ上がった唐揚げを何個かバレないようにつまみ食いしていた。
しっかりバレてはいるが、なにせ量がたくさんあるからな。味見っていう名目で大目に見ておこう。
小魚を全て唐揚げにし終えたところで、先ほどからずっと煮込んでいたスープの所へ、バイルのことを呼び寄せた。
「こっちもそろそろ出来上がりますよ。」
「おっ!!ようやくか……そっちの方が時間かかったな。」
「水と油じゃ火の入りやすさがまた違うので、仕方ないですよ。」
そう言いながら、俺は鍋の蓋を開けた。すると、ブワッ……と閉じ込められていた野菜と鶏の良い香りが一気に飛び出してくる。
「うぉぉぉぉっ!!いい匂いだぞ!!」
「これの味付けなんですけど、塩だけで大丈夫です。」
「塩だけ!?海水みてぇにならねぇのか?」
「まぁ、実際に味を確かめてみたほうが早いですよ。」
俺はスープに塩を入れて、全体に馴染むようにかき混ぜた後、バイルに手渡した。
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