食料部隊バイル


 野菜の切りつけも終えて、今度はいよいよそれに火を加える調理に移るのだが……ここで肉屋からもらった鶏ガラの出番だ。


「野菜に火を通す前に、これを綺麗に洗いましょうか。」


「肉屋からもらった鶏の骨か。一見どこも食べれそうに無ぇが、そいつはどうするんだ?」


「この骨からは、料理の基本の味になる出汁を引きます。なので、付着している血を綺麗に取り除きましょう。これの手を抜くと料理が臭くなるので、丁寧にやってください。」


「わかった。」


 鶏ガラを一つ一つ洗って、その上から熱湯をかけて細かい汚れまで綺麗に取り除く。その後は、大鍋にたっぷりの水を張って、そこに鶏ガラと先程切った野菜の、根野菜の方を入れた。


「今入れたのは、土の中に生える野菜の方です。こちらの方が火が入りにくいので、じっくりと水から加熱して火を入れていきます。」


「こっちの野菜はどうすんだ?」


「そっちは鳥の骨から出汁が抽出できたら投入します。」


「なるほどな、段階で分けるってわけだ。」


 ほうほう……と頷きながら、鍋を覗き込んでいるバイルに俺は一つあることを告げた。


「この作業をバイルさんは、他の兵士の人に教えてあげてくださいね。」


「なぬっ!?」


「当たり前じゃないですか。ただ俺が炊き出しをするだけなら、バイルさんがここにいる必要はないんです。他の兵士の人にも作れるようになってほしいから、こうやってバイルさんと一緒にやってるんですよ。」


「それを早く言えっ!!あ〜っと、紙……どっかに紙は無かったか?」


 ガサゴソとその辺を探るバイル。すると、この調理場の前に貼ってあったポスターのようなものを引っ剥がして戻ってきた。


「あ〜まずは野菜を洗って……切って………………。」


 そして彼は、さっきまでの工程をサラサラと文字に書いていく。


「で、今に至る……と。この次は何をすれば良いんだ?」


「今ちょうど沸き上がってきたところなんですけど、このふわふわ浮いてきたアクを徹底的に取り除きます。これを放置すると、また臭みに繋がるのでこれもしっかりと丁寧に取ってください。」


「不器用でも作れるって料理のはずだが……随分工程を挟むな!?」


「今までやって来た工程に器用さ……必要でした?丁寧にやるだけで誰でも出来ると思いますけど。」


「ぐっ、何も言えねぇ。オレでも出来ちまったからな!!」


「それじゃアク取り係を交代しましょうか。もうそろそろ水の色が変わってくると思いますよ。」


 バイルにお玉を手渡し、俺は彼が言われたとおりに丁寧にアクを取り除くのを横で見守った。


 そしてアクが出てこなくなった頃……鍋に入っている水の色が金色に変化し始めた。

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