栄養満点の食事のために


 兵士たちの駐屯地にある料理の施設を借りて、その場でバイルと共に料理をすることになった。


「じゃあまずは野菜から下処理して行きましょうか。」


「皮を剥くとかそういうやつか?」


「野菜の皮は剥かなくていいですよ。今回は丸ごと使いますから。」


「丸ごと使うのか!?」


「はい、端材がもったいないので。どうしても食べられない部分だけ取り除きます。」


「なかなか豪快なモンを作ろうとしてんな……。」


「豪快っていうか、食材を無駄にしないってだけですよ。さ、野菜をまずはしっかり洗いましょう。売り物にならないって放置されてたものもあるので、入念に洗ってください。」


「おう、それぐらいなら任せとけ。」


 そしてバイルと共に、まずは野菜を一つ一つ丁寧に洗って汚れを落としていく。これだけの量のため、野菜を洗うだけでも相当な時間がかかるが、まだこれは下準備にすぎない。


 やっと野菜を全て綺麗に洗ったところで、今度は虫食いの部分や、食べられないような所を取り除く作業に移る。


「じゃあ今度は虫食いとか、食べられない所を取り除いていきましょう。」


「こ、これ全部やんのか?」


「もちろんです。虫食いのところは、こうやって包丁の刃元を使ってくり抜きます。なるべく無駄がないようにしてくださいね。」


「む、難しいこと言ってくれるぜ。」


「これだけ量があるので、やってれば慣れますよ。さ、手を動かしましょう。」


 初めての包丁での作業に四苦八苦しているバイルの横で、俺はテキパキと野菜の食べられない部分を取り除いていく。


 バイルは俺の手の動きをチラチラと見て、それを真似するようになると、次第に手際が良くなっていった。


「意外と包丁の扱いってやつは、慣れれば簡単だな。」


「そうやって調子に乗ってると、指切りますよ。血がついた野菜は食べられなくなっちゃうので、気をつけてくださいね。」


「お、おぅ……。」


 調子に乗り始めたバイルを窘めながら、下処理を進める。そしてやっと食べられる部分のみとなった野菜を、いよいよ切っていく。


「次はいよいよ切る作業になるんですけど、ここで1点注意して欲しい所があります。」


「ただ切れば良いんじゃねぇのか?」


「切った後の分別が大事なんです。具体的に言えば、土の上に生えてる野菜と、土の中に生えてる野菜を分けて欲しいんです。」


「それには何の意味があんだ?」


「同じ切り方でも、火の通り方が違うんですよ。皮付きなので尚更。」


「はぁ〜……料理ってやつはわかんねぇな。」


「詳しいことは、火を通す時に分かりますよ。今は手を動かしましょう。」


 バイルに野菜の切り方を見せながら、どんどん野菜の仕込みを終わらせていくのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る