バイルと共に外回りへ


 少し待っていると、向こうの方からバイルが一人でとぼとぼと歩いてきた。


「あ、あれ?大丈夫ですか?」


「面目ねぇ、ヒイラギんとこに人手を回してやりたかったが……みんな手一杯でよ。自由に動けるのがオレしかいねぇんだ。」


「なるほど、それは仕方ないですね。」


 バイル一人でも十分だ。あくまでも俺の目的は、お手伝いじゃなく別にあるからな。


「そういうわけで、オレしか手を貸してやれねぇんだが、大丈夫か?」


「むしろ好都合かもしれませんね。じゃあ行きましょう。」


「行くっつってもよ、どこに行くんだ?」


「まずは市場の食材を扱ってる人たちのところに行きます。」


「あ~、さっきも言ったけどよ。食料ならほぼ全部城に集められてるはずだぜ?」


「その食料は民間人の人達に使ってもらって大丈夫です。今からもらいに行くのは、売り物にもならないような野菜とか、肉の切れ端とか、そういうのをもらいに行くんです。」


 食料が集められたとはいえ、そういう捨てられてしまうようなものは残っているはずだ。そういう物でもしっかりと料理してやれば、ちゃんと美味しくなる。


「なるほどな……確かにそういうのは残ってるかもしれねぇ。」


「あとは農家とか漁師の人とか、そういう人たちにも話を聞きに行きます。だから結構歩きますよ。」


「ドンと来いってんだ。これでも新顔の兵士にゃ負けねぇ体力はあるぜ。」


「頼りにしてますよ。それじゃあ行きましょう。」


 そしてバイルと共に王都を隅々まで歩き回って、本来捨てられるような食材や売り物にならないような食材をかき集めて回った。


 すると俺の思った通り、かなりの量の野菜と魚、肉の切れ端などが集まった。しっかりと料理に変えてやれば、これだけで大量の人達のお腹を満たせるだろう。


「まさかこんなに食料が残ってたとはな、意外と捨てちまう食材って多いんだな。」


「まぁ、みんなほとんど商売のために野菜を作ったり魚を取ったりしてますから。売り物にならないようなものはどうしてもこんな感じで出てくるんですよね。こんな野菜とかも、ちょっと虫食いがあるだけで、全然食べられますよ。」


「ちなみに聞くまでもねぇと思うがよ、この集めた食材はどうすんだ?」


「もちろん調理して兵士の人達に振る舞うんですよ。もちろんバイルさんにも手伝ってもらいますから、本番はここからですよ。」


「お、オレ料理なんてしたことねぇぞ……。」


「大丈夫です。今から作るのは、不器用な人でも作れる簡単な料理ですから。」


 料理には器用さは確かに必要なスキルだが、不器用な人でも作れる料理……つまりお手軽な料理というものは存在する。兵士の人達みたいに、一度も台所に立ったことのないような人たちでも作れるものがな。


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