復旧が進む王都
エミルでの用事を終えた後、俺は人間の国の王都へと転送の結晶で飛んできた。様子がどうなっているのか……気になったのだ。
「1日時間が過ぎた……っていうのもあるけど、少しだけ片付いたかな。」
あちこちに散らばっていた魔物の死体は見当たらない。道を塞ぐようにして転がっていた瓦礫も、大半が片付けられているようだ。
「でもまだまだ……完全復旧にはほど遠いな。」
この惨状が完全に元通りになるには、かなりの時間が要されるだろう。
「城もまだ崩れて露出してる所が、遠くからでも見える。」
足場がかけられて、城の補修作業は始まっているようだが、あれも元通りになるのはいったいいつになるのか。
王都の惨状に胸を締め付けられながら、歩いていると……。
「ん?ん!?お前ヒイラギだろ!!」
「え?」
後ろから大声で呼びかけられて、振り返ってみると革命の時に尽力してくれたバイルが、作業着姿で走ってきていた。
「バイルさん、そんな姿で何してるんですか?」
「決まってんだろ、オレも瓦礫の撤去とか手伝ってんだ。如何せん兵士の人手も足りねぇもんでな。」
「そうだったんですか……。」
「あぁ。っと、それよりも礼の方が先だな。今回も助けられた……感謝する。」
「いえ、やれる事をやっただけです。」
「淡々と言ってくれる。国を救ったんだぞ?もっと誇れ誇れ!!」
バシン……と俺の背中を叩きながら、バイルは笑う。すると、彼の腹から空腹を知らせる悲鳴が鳴った。
「チッ、動けば腹が減りやがる。困った体だぜ。」
彼はやれやれと後頭部に手を当てた。すると、ズボンのポケットに手を突っ込んで、乾パンのような物を口の中に放り込んだ。
「昨日からそんな非常食を?」
「ん?あぁ、民には王都に残った食糧を配布しなきゃいけねぇからな。オレ達は、その貴重な食糧を浪費しねぇように、備蓄してあった戦闘糧食を食って、腹を膨らませてんだ。」
「兵士達も……みんなそんな物を?」
「そうだな。」
今の兵士達の現状に俺は思わず頭を抱えた……。確かにこれは一時的に腹は膨れるかもしれないけど、力仕事をした人には、明らかにエネルギーが足りていない。
「バイルさん、兵士に料理ができる人はどのぐらいいます?」
「あぁ〜……1部隊いたんだが、そいつらは今配給の任についてる。」
「じゃあ未経験でもいいので、2人ぐらい人手を回してほしいんですけど。」
「2人?そんなもんでいいのか?」
「はい、作業の支障にならない人数で大丈夫です。」
「……わかった。すぐに人を回そう。ここで待っててくれ。」
「ありがとうございます。」
そしてバイルは作業着姿で、何処かへ走って行ってしまった。
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