筋肉に惹きつけられて


 闘技場で筋トレをしていたバフォメットを連れて、ハリーノ達が待っている受付へと戻ると、案の定俺の隣に立っているバフォメットを見てハリーノ達は驚いてしまっていた。


「あ〜……みんな、一先ず落ち着いて欲しい。こいつはバフォメット、俺のなんだ。」


「ヒイラギ、我は獣人では……ごふぅっ!?」


 否定しようとしたバフォメットの腹に肘をめり込ませて口を封じながら、みんなに聞こえない小声でバフォメットに釘を刺す。


「いいか、お前が魔物だってわかったら、みんな怖がるだろ。そういう設定でいてくれ。」


「しょ、承知した……。」


 そして改めてみんなにバフォメットが、これからみんなのことを守ってくれる存在であることを告げることにした。


「これからはバフォメットがみんなのことを守ってくれるからな。ちょっと体も大きいし、顔も怖いけど……コイツは良いやつだから、あまり恐怖心を抱かないでくれ。」


 ポンポンとバフォメットのことを軽く叩きながらそう言ってやると、奴はハリーノ達の恐怖心を払拭するべく、社交的に自己紹介を始めた。


「驚かせてすまなかったエルフ達。我の名はバフォメット……山羊の獣人である。よろしく頼むぞ。」


 そしてバフォメットは、ハリーノ達へと向けて大きな手を差し出した。てっきりみんな怖がってて、近づけないのかなと思っていたのだが、次の瞬間……ハリーノ達は嬉々として一斉にバフォメットの手を握りに行った。


「ふぉぉぉっ、す、すごい筋肉ですねぇ〜。触っても良いですかぁ?」


「む、我が怖くはないのか?」


「社長のご友人の方に悪い人はいませんからぁ。」


 彼女達の視線は、バフォメットの鍛え上げられた筋肉へと向いていたのだ。


「あ、す、すみません……自己紹介を忘れてました。私はハリーノです〜。よろしくお願いしますねぇ、バフォメットさん。」


「う、うむ。」


 ハリーノ以外のエルフ達もバフォメットの腕の筋肉や、腹筋を触りながら自己紹介を終えていた。


 なぜ彼女達があんなに筋肉に目を輝かせているのかは不明だが……一先ず恐怖心は抱いていないようで安心だ。


 その後、ハリーノ達の要望で筋肉を主張するようなポーズをとらされているバフォメットを、ミースと二人で苦笑いしながら眺めていた。


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