最強の護衛
エミルの街へとやって来た俺達は、真っ先にギルドへと向かう。扉を開けてギルドの中に入ると、そこにバフォメットの姿はなかった。その代わりに、ミースとウォータードラゴンが、モリモリと朝食を頬張っていた。
「んっ!!……んん、ぷはっ。お、おはようございますヒイラギさん!!」
「おふぁほうおはいはふ〜。」
「おはようミース、ウォ……ベール。」
「後ろの方々は……え、エルフの方達ですか!?」
「そ、しばらく王都での営業ができないから、ここで営業することにしたんだ。」
「ってことは、いつでもお菓子を買い放題!?」
「しばらくの間はな。たくさんお菓子を買ってくれたら、何か良いことがあるかもな。」
「ほ、ホントですか!?絶対行きます!!」
お菓子に目がない様子のミースは、もうキラキラと目を輝かせている。
「で、万が一の為に護衛を雇いたくてさ、バフォメットは居るか?」
「あ、バフォメットさんなら、地下で他の冒険者さん達と修行中です。」
「わかった。アイツのこと借りても良いかな?もちろん報酬はギルドに払うけど……。」
「全然大丈夫です!!」
「ありがとう。じゃあ報酬の話はまた帰るときにしよう。みんなはここで待っててくれ。」
そしてみんなを酒場で待たせて、俺は地下にある闘技場へと向かう。すると、闘技場の入口ではたくさんの冒険者が肩で息をしながら水分補給をしていた。
多分みんなバフォメットに相手してもらった後だな。
「さてさて、アイツは元気でやってるかなっと。」
いざ闘技場の中に足を踏み入れると、そこではバフォメットがものすごい勢いで腕立て伏せをしていた。
「よっ、相変わらず元気そうだな。」
「むっ!?ヒイラギかっ!!ダンジョンの中ではない故に、来たのが分からなかったぞ。」
「お前にちょっとお願いがあってな。」
「ふむ、聞かせてもらおう。」
腕立て伏せをやめて、どっかりと闘技場の真ん中に座り込むと、バフォメットは大瓶に入った水を勢いよく飲み干していく。
「実は、お前にエルフの護衛をお願いしたいんだ。」
「ほぅ、我は一向に構わぬが……ミースがなんと言うかが問題であるな。」
「大丈夫、もうミースからは許可をもらってる。」
「ふむ、ならば問題あるまい。……で、護衛と言っても我は何をすればよいのだ?」
「エルフを襲おうとする輩を無力化してくれればそれでいいよ。」
「実に簡単な話だ。我に任せておけ。この圧倒的筋肉で、エルフを守ってやろう。」
ムキッと全身の筋肉を主張するようなポーズをとるバフォメット……。コイツはいつからボディービルダーになったのだろう。
まぁ兎にも角にも、最強の護衛が雇えたのはデカいな。あとは、この見た目にハリーノ達が恐怖しないと良いんだけど。
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