エルフの収穫祭…開幕
たこ焼きを買って行ったエルフたちが、それを食べながらせっせとお祭りの舞台を作り上げていく。そうして空が茜色に染まってくる頃には、今未熟な世界樹が生えている場所の前に様々な装飾が施された神聖な舞台が完成した。
その舞台の前には、この国で採れた農作物がたくさん貢物のように捧げられている。
「うむうむ、今年も良い出来だ。」
舞台の完成を見届けていたカリンは、満足げに一つ大きく頷いた。
「さて、そろそろ此方の出番が回ってくるな。」
「出番……ですか?」
「あぁ、あの舞台の上で来年の豊作を祈願する舞いを踊らねばならんのだ。」
そして彼女は手にしていた最後の一つのたこ焼きを口の中に放り込むと、くるりとこちらに背を向けた。
「では期待して待っているがよい。しばしマドゥのことは任せるぞ社長。」
「任されました。」
マドゥをこちらに預けて、カリンは何人かのエルフと一緒に舞台の裏へと行ってしまった。
「さて、それじゃあ俺は引き続きたこ焼きでも焼いてようかな。マドゥも食べるだろ?」
「あ、い、いただきます。」
「うんうん、じゃあシア達と一緒に座って待っててくれ。」
特設されたベンチに座っているシア達のもとへとマドゥが走って行ったのを見送って、俺が再びたこ焼きを焼き始めると、何やら珍妙な御面を着けたフィースタがお客さんとしてやってきた。
「やぁフィースタいらっしゃい。」
「こんばんは、私もたこ焼きというものを一つ頂いてもよろしいでしょうか?」
「もちろん。ちょっと待っててくれ。」
追加でたこ焼きを焼きながら、彼女にその御面について問いかけてみた。
「フィースタ、気になったんだが……その御面は何なんだ?」
「この御面は、カリン様があの舞台の上で踊る時に、これを着けて一緒に踊るためにあるんです。エルフならみんな持っているんですよ?」
「なるほど、そのための物だったのか。俺達は着けなくていいのかな?」
「これはあくまでもエルフのお祭りですから、他の種族の方々は着けなくても大丈夫ですよ。」
「そうなんだな。」
「えぇ、でももし一緒に踊りたくなったら、良ければこちらをどうぞ。」
そしてフィースタはそれぞれ違う御面を俺たちの人数分手渡してくれた。
「もらっちゃっていいのか?」
「もちろんです。あなた様方はもうこの国の一員みたいなものですし、ぜひぜひ一緒に踊って行ってくださいね。」
「ありがとう。じゃあこれお返しに。」
御面のお返しに出来立てのたこ焼きを手渡すと、彼女はそれを嬉しそうに受け取って、おもむろに一つパクっと食べてしまった。
「あっ……。」
「~~~~っ!?あふっ、あふいへふーーーっ!!」
うっかり、気を付けるようにと注意するのを忘れてしまっていた。出来立てのたこ焼きの熱さに悶絶しているフィースタに冷たい水を差し出していると、祭り太鼓の音がドンドンと聞こえ始め、舞台の上にとんでもない姿になったカリンが現れた。
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