ダンジョン改造


 二階から一羽の鳥を抱えて下りてきたミースは、バフォメットの隣に座っていた俺に気が付くと、ぱぁっと表情を明るくした。


「あ、ヒイラギさん!!いらっしゃってたんですね?」


「やぁミース。ちょっとこっちの様子を見に来たんだ。」


「そうなんですね、ちょっと待っててください。」


 ミースは手にしていた鳥の足に紙を結ぶと、夜空へと羽ばたかせた。その後俺とバフォメットが囲んでいたテーブルに加わった。


「急に王都から、エミルの街で魔物が溢れるなんて異常が起きてないかって確認の連絡が来てて……。」


「それはさっきエートリヒが送ったやつだな。」


「え、えぇっ!?こ、国王様直々の書状だったんですか!?」


「そうだぞ。ちょっと王都で大きな事件が起こっちゃってな。それと同じことがこの街で起こってないかの確認だったんだ。」


「お、王都で事件が!?何が起こったんですか!?」


「王都にある勇者の墓ってダンジョンから大量に魔物が湧きだして、王都が襲われたんだ。」


「そ、そんな……。」


「それは解決したんだけど、その事件の首謀者がどうやらこのエミルのダンジョンをおかしくしちゃったやつと同じみたいなんだ。」


「えぇ!?」


 俺はバフォメットにあの女の特徴について話してみた。


「バフォメット、そのダンジョンに入ってきた女って、なんか毒々しい服装の女じゃなかったか?」


「うむ、その通りだ。歩くたびにおかしな煙を巻き上げていたな。」


「あぁ間違いないな。」


 バフォメットの証言は、あの女の特徴と合致する。間違いないだろう。


「ま、そういうことがあって、このギルドの地下にあるダンジョンは大丈夫かなって心配だったわけだ。」


「このギルドの地下のダンジョン……実はついさっきバフォメットさんが入口を閉じちゃって、鍵もかけなおしちゃったんです。」


「え?鍵をかけなおすって……バフォメット、お前そんなこともできるのか?」


「無論だ。我はこれでもダンジョンの権限を全て握っている。鍵を新たにつけることぐらい簡単だ。」


 そう言ってバフォメットはいびつな形の鍵を取り出してみせた。


「これでダンジョンの扉を開けない限り、魔物は外には溢れ出して来ぬ。」


「なるほどな。まぁそれだったら安心か。」


「そういうわけだ。だから我の仕事が一つ減ってしまったが……その代わりにミース達では対処ができぬ依頼を我が請け負うことにしたのだ。」


「それならミースも助かるな。」


「すっごく助かります!!」


「はは、そうだよな。」


 そしてミース達の様子が変わりが無いことに一安心し、バフォメットから注いでもらった酒を飲み干してからエルフの国へと戻るのだった。




 

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