エートリヒによる事情聴取


 今回の事件の全貌を知ったエートリヒは、深く大きなため息を吐き出しながら、メモを取っていたペンを置いた。


「今回の事件にもまた死の女神が関わっていたとはな……。いよいよもって許しがたい存在だな死の女神。」


「そうですね。」


「……ふぅ、怒りで脳を支配されては何も思考がまとまらないな。一度脳を空にして今回の事件を考えてみよう。」


 そしてエートリヒは俺の話をメモした紙に目を通した。


「今回の首謀者であるその女……確かエミルのギルドの地下にあるダンジョンの中にも行った可能性があるという話だが……エミルの方は大丈夫なのだろうか。」


「あぁ、あっちは多分大丈夫です。ギルドでめちゃくちゃ強い防衛係を雇ったみたいなんで。」


「そうか、だが確認は必要だな。すぐに状況を確認させよう。」


 サラサラとエートリヒは紙に文章を書くと、それを部屋の外に待機していた兵士に持たせた。


「これですぐにエミルのギルド長から返答が帰ってくるはずだ。その間に、この女がどういう目的でダンジョンから魔物を溢れさせたのかを考えてみるか。貴公が奴と話をした限りでは、特に理由は語らなかったという話だが……。」


 また椅子に腰かけた後、エートリヒは先ほど俺の話を聞いて描いた、めちゃくちゃ上手い女の似顔絵を指さしながら言った。


「はい、特に目的は何も語りませんでした。」


「エルフの国で幹部を一人捕らえたという話だが、その幹部を取り戻そうとこちらに陽動したとは考えられないかね?」


「それは無いと思います。もしエルフの国に何かあればカリンがすぐに俺に連絡を入れてくると思うので……。」


「念のため確認してもらえないか?」


「わかりました。」


 連絡用の端末でカリンに連絡を取ってみると……。


「社長か?」


「はい、俺です。」


「なにやら人間の国で魔物が湧きだす事件が起こったらしいが、大丈夫だったか?」


「はい、一先ず騒動は落ち着きました。」


「そうか、なら良い。」


「そっちのナルダには何か異常が起きていたりしませんか?」


「……ナルダは。」


「えっ?し、死の盟約は大丈夫だったんですか?」


「奴に繋がれていた死の女神に繋がる鎖……あれが突然切れたのだ。それと同時にナルダが死んでしまった。」


「そうだったんですか……。わかりました。」


「詳しい話は社長が帰ってきてから話す。今はそちらの問題を片付けてきてくれ。」


「はい、それじゃあまた。」


 そしてカリンとの連絡を終えたが、どうやら向こうでも予想外の事態が起きていたらしい。もしかして、こっちの事件と何か関わりがあるのかな……。

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