悲しむエートリヒ
こちらに歩いてきたエートリヒに、すぐにキースを含む兵士たち全員が敬礼する。
「すまないな貴公……また手を借りてしまった。」
「良いんですよ。俺の大事な社員がここにいたから、それを守るためにやっただけです。」
「その行動で大勢の命が救われたのも事実だ。違うかね?」
「全員は助けられませんでしたよ。」
「そう悲観することは良くないな。助かった命があるだけで、貴公が成したことには大きな意味があった。」
そう語りながらエートリヒは街の惨状に目を向けた。
「ずいぶん建物が破壊されてしまった。これは再建に時間がかかる。家族を失ってしまった民への補償も考えなければ……。」
少し悲しそうな表情でそう言ったエートリヒは、またこちらに目を向けて口を開いた。
「貴公はこの騒ぎの原因がわかっているのだろう?できれば話を聞かせてはくれないかね?」
「わかりました。ついて行きますよ。」
「助かるよ。」
そしてエートリヒに連れられて、ある建物の中に案内された。
「城の中じゃないんですね?」
「城は今使えない。だいぶ魔物に壊されてしまったからな。」
彼は一室の前で兵士に待っているように告げると、俺を連れてその中へと入った。
「ここは国で持っている空き家だ。しばらく掃除の手が入っていなかったから、ほこりが積もっているが、構わないかね?」
「大丈夫ですよ。」
エートリヒが座った正面の椅子に腰かけると、彼はテーブルの上に置かれた蠟燭に灯りをつけた。
「さて、まず今回魔物の大量発生で、危険の排除に尽力してくれたことを心から感謝させてもらう。」
深く頭を下げてそう感謝の言葉を口にした後、早速今回の事件についての質問が始まった。
「まず最初に確認しておきたいのは、今回の魔物の大量発生の原因は何だったんだ?」
「あれはこの王都の地下にある勇者の墓っていうダンジョンに、人為的な異変が起こってしまったことが原因です。」
「……この事件は人為的に引き起こされたものだという事かね?」
人為的という言葉にエートリヒの顔が一気に険しくなった。
「はい。」
「その人物は何者か、わかるかね?」
「名前はわかりませんけど、特徴なら覚えてます。」
「できるだけ詳しく教えてくれ。そいつだけは許してはならない。」
明らかに表情に怒りを見せるエートリヒに、俺はダンジョンの中で出会った今回の事件を引き起こした黒幕の特徴などを話していくのだった。
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