99層へ


 マキナの権限を取り戻すために、権限を付与されてしまった魔物を倒して回っていたのだが、幸いなことに89層の魔物までは一発で宝玉をドロップしてくれていた。


「ふぅ……流石に89層ともなると、魔物がめちゃくちゃ強くなったな。」


「89層守護者はドラゴンゾンビ……普通の人間なら、ドラゴンゾンビの吐く息を吸っただけで絶命してしまいます。80層より下の階層の守護者は、このような理不尽さを兼ね備えた魔物ばかりですよ。」


 モキュモキュとドラゴンゾンビの宝玉を頬張りながら、マキナがそう解説してくれた。


「まぁ、そんな理不尽をいとも簡単に跳ね返してしまっているヒイラギも、十分に理不尽な存在と言えるでしょう。」


「そうかなぁ……。」


 そしてドラゴンゾンビの宝玉もマキナが平らげてしまうと、またマキナは自分の前に表示された画面を弄くり回し始めた。


「今回は何の権限が戻ったんだ?」


「大して使えるような権限ではありません。ただ魔物のステータスを自由に変更できるようになっただけです。」


「それってこの先結構重要だと思うぞ?だって99層の魔物のステータスを、めちゃくちゃに下げれるってことだろ?」


「肯定します。ですが、私マキナはダンジョンの管理者として、そのような挑戦者に有利になるような事は致しません。」


「……ダンジョンの権限が一生戻らないとしても?」


「…………い、致しません。」


 少し声を震わせながら、マキナは首をふるふると横に振った


「ふぅん、そっか。まぁやるやらないは、マキナが俺とその99層の魔物の戦いを見て決めてくれ。」


 俺も負けるつもりはないけど……万が一ってことはあるからな。


「で、ちなみに99層の魔物ってどんなやつなんだ?」


「私が設定したのは、。三ツ首の魔獣です。」


「ケルベロスか。」


「ご存知ですか?」


「この世界じゃない場所に言い伝えられてたケルベロスって生き物は知ってる。」


「……?言っている意味が良くわかりませんが、この際そこは気にしないでおきます。」


 そう割り切って、マキナはまた階層を移動する装置に触れた。


「では準備は良いですか?」


「あぁ、大丈夫だ。」


 マキナが99層のボタンに触れるとまた景色が変わり、なにやら禍々しい雰囲気を放つ場所に移動してきていた。


「ここが99層……で、アイツがケルベロスか。」


 眠るように地面に伏している三ツ首の巨大な犬の魔物……アレがケルベロスなのだろう。大方イメージ通りだ。


「襲ってこない……のか?」


 今までの魔物は、皆俺を見るなりすぐに襲いかかってきたが、コイツはまだ起き上がってくる気配がない。


 余裕の表れなのか……それとも何か別の理由が?


 と、思考を巡らせながら警戒心を強めていると、そのケルベロスの背中の上に、人が座っていたことに気が付いた。


「待ってたわよぉ、カオスドラゴンの継承者クン?」


 

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