権限を取り戻す方法
51階層に鎮座していた魔物は、グレイスのようなワイバーンだった。サイズ感はこのダンジョンにいるやつのほうがかなり大きかったが……まぁ、それでも敵じゃなかった。
「なんかグレイスをボコボコにしちゃったみたいで、罪悪感があるな。」
特に悪いことをしたわけでもないのだが、心のなかでグレイスに謝りながら、俺はあるものを探して歩く。
「……そういえばマキナ、権限はどうなってる?」
「私には戻ってきていません。」
「そうじゃなくて、次はどの階層の魔物に移ったのかなって。」
「それは…………あれ?これは、何が起こって……。」
階層を移動する装置を前にしたマキナが首を傾げる。
「どうしたんだ?」
「あなたが魔物を倒したので、他の階層の魔物へ権限が移るはずなのですが、相変わらずここの階層が光ってます。」
「となると、俺の仮説は正しかったってことかもな。」
「それはどういうことでしょう?」
「ま、ちょっと一緒に丸い宝石みたいなやつを探してくれよ。それが鍵になるんだ。」
「……わかりました。」
マキナと共に倒したワイバーンの周りを探し回るが、俺の目当てのものは見当たらない。となると、ありそうなのはこのワイバーンの体内か。
「ここはレヴァの出番かな……って、しまった。マジックバッグに入れっぱだった。」
そうなると、仕方がないから手でやるしかないな。
俺は手刀にサンダーブレスを纏わせて、ワイバーンのお腹に当てた……。すると切れ味の鋭いメスのように、スッと手がワイバーンの体内へと入ってしまう。
死んで間もないから、まだ体内は温かい。それが手にダイレクトに伝わってきてしまう。
そうしてワイバーンのお腹を開いて、探し物を探していると、世にも恐ろしいものを見てしまったような表情で、マキナが声を震わせながら問いかけてきた。
「ひ、ヒイラギ、あなたは何をしているのですか?」
「いや、探し物がその辺に転がってるってわけじゃないから、もしかするとコイツの体内にあるのかなって。」
「うぅ……み、見てられません。」
「ま、無理に見ろっては言わないさ。だいぶグロいからな。」
ウォーターブレスで血を洗い流しながら、内臓を一つ一つ確認していると、ワイバーンの内臓の奥からゴロリと、丸い宝玉が姿を現した。
「ん、あったあった。」
それを内臓を傷つけないように取り出して、しっかりとウォーターブレスで洗ってから、マキナの元へとそれを運んだ。
きっとこれが、マキナにダンジョンの権限を取り戻させてくれる……はずだ。
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