マキナに残されている僅かな権限


 早速俺はその権限を持っているという魔物の居場所をマキナに問いかけてみることにした。


「マキナ、その権限を持っている魔物ってどこにいるかわかるか?」


「それでしたらこちらへ。」


 マキナについて行き、闘技場のような場所の奥に設置されていた扉をくぐった。するとそこには、0~100の数字の書いてあるボタンが付いたパネルのようなものが置かれていた。


「今の私に残っている権限でも、これだけは使うことができるんです。」


「このボタンは何なんだ?」


「これを押すと各階層へと飛ぶことができるんですね。今権限を持っている魔物がいるのは……。」


 マキナはパチンと指を鳴らすと、いくつかのボタンが光り輝いた。


「今光っている階層に権限を持った魔物がいます。」


「なるほど、じゃ早速行ってみようか。」


「浅い階層から行きますか?」


「あぁ、そうしよう。」


「ではまず42階層へ移動します。」


 マキナがぽちっとボタンを押すと、一瞬体が浮かび上がったような不思議な感覚を感じた。それと同時に目の前の景色がまた変わり、今度はさっきマキナといた場所が苔むしたような場所へと移動して来ていた。


「つきましたよ挑戦者。」


「……なぁその挑戦者ってい呼び方やめないか?俺はヒイラギだ。」


「ではヒイラギと呼びます。」


「ん、そうしてくれ。」


 そんな会話をしている間に、俺の背後に迫っていた魔物が攻撃を仕掛けてきた。


「グゥゥオォォォォッ!!」


「マキナ、コイツが権限を持ってる魔物で間違いないんだな?」


「はい、42階層守護者です。」


 サイクロプスという一つ目の巨人が振り下ろしてきた大きな鉈のような刃物を、マキナを抱えながらひらりと躱す。


「ちょっとマキナはここにいてくれ。」


「はい。」


 離れたところにマキナを下ろして、俺はサイクロプスという巨人と向き合った。


「サイズ感はバフォメットと同じぐらいか。」


 観察しているとまたサイクロプスは俺へと向かって、手にしている巨大な鉈を振り下ろしてくる。威力は驚異的だが、巨体を動かしているだけあって遅いな。


「バフォメットとは俊敏性が段違いだな。」


 これだけの巨体ならわざわざ武器を使う必要もないだろうに……ま、そこがバフォメットとの違いかもな。


「それだけの巨体なら相当足を鍛えてないと膝に負担がかかるだろ?」


 サイクロプスの膝を思い切り蹴り抜くと、真逆の方向に膝が折れ曲がり奴はがくりと崩れ落ちた。


「これでトドメだ。」


 足にサンダーブレスを纏わせて、崩れ落ちたサイクロプスの首を蹴り抜く。サイクロプスの首が体を離れて地面に転がると、マキナがこちらに向かって拍手をしていた。


「素晴らしい実力ですね。ずいぶん余裕あるように見えました。」


「まぁ、コイツよりも強い魔物と何回も戦ったからな。このぐらいなら全然余裕だよ。……で、権限は戻ったか?」


 その問いかけにマキナはフルフルと首を横に振った。


「ダメです。何も変わっていません。42階層の光は消えましたが、代わりに今度は51階層に反応を感じます。」


「そっちに権限が移ったってことか。」


「どうしますか?」


「ちょっと確認したいことがあるから、もう一回倒しに行こう。」


「わかりました。では51階層へ向かいます。」


 俺はとあることを確認するため、マキナに頼んで51階層へと向かってもらった。俺の予想が正しければ……魔物を倒しただけでマキナに権限が戻るかもしれないのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る