魔物が溢れる王都
次に目を開けると、俺とレイは人間の王都のはるか上空へと転移していた。
「むっ!?これはいったいどういうことじゃ!?正確な転移ができなかったのじゃ。」
「構わない。むしろここからなら王都の様子が良く見える。」
上空から王都の様子を見下ろしてみると、街のいたるところに魔物が蔓延っていた。数が圧倒的過ぎて兵士たちの兵力じゃ足りていないようだ。
「何がどうなってるんだ。とにかくハリーノに連絡を取ってみよう。」
連絡用の端末を取り出して、ハリーノに連絡を取ると、すぐに彼女が応答してくれた。
「ハリーノ、今王都に着いた。どこに隠れてるんだ?」
「今はぁ……いつもお菓子を売ってる場所の隣の建物に立てこもってます。」
「わかった。魔物は入ってきてないか?」
「い、入り口に押し寄せてて……もう少しでと、扉が。」
「今行く、もう少し耐えてくれ。」
通話を繋いだまま、俺はレイに声をかける。
「レイ、今からエルフたちを救出に行く。ついてきてくれ。」
「承知したのじゃ!!」
王都に向かって急降下しながら、いつもハリーノたちがお菓子を売っている場所に向かう。すると、魔物の大集団が一つの建物へと押し寄せているのが見えた。
「多分あれだな。」
両足にサンダーブレスを纏わせて、その集団へと向かって落下の勢いそのままに着地した。
「ふんっ!!」
着地した場所から一気に雷が辺りに広がり、集まっていた魔物の大半が灰となって消える。
「まだ魔力が完全に回復したわけじゃないから、威力が少し足りなかったか。」
残った魔物に向かって構えをとると、その次の瞬間残っていた魔物がまとめて業火に包まれて焼き尽くされてしまった。そして業火に焼かれて黒焦げになった魔物の体の上にレイが勢いよく降り立ってきた。
「ほいほいっと。焼却完了じゃ。」
「助かったよレイ。このまま魔物が入ってこないように見張りをお願いできるか?」
「任されたのじゃ。」
「頼むぞ。」
レイに入口の防衛を任せて、俺は入り口が崩れてしまった建物の中に入った。
「ハリーノ!!みんな、無事か!?」
そう大声で叫ぶと、とある一室からひょっこりと涙目のハリーノが顔を出した。
「しゃ、しゃちょ~!!みんな社長が来てくれましたよぉ~!!」
「良かった、みんな無事なんだな。」
こちらにいた全員が無事なことを確認して、俺はホッと胸をなでおろした。後はレイにみんなを連れてエルフの国に戻ってもらおう。
「みんなすぐに帰れるからな。このバッグの中に入ってくれ。」
社員のみんなを安全なマジックバッグの中に匿って、レイのところに戻ると、巨大な牛の魔物をレイがぼこぼこにしていた。
「レイ、みんなを連れてエルフの国に戻ってくれないか?」
「主はどうするのじゃ?」
「俺は後で自分で戻る。とにかくみんなのことを頼む。」
「うむむ、主の命ならば従おう。」
そしてレイは、魔法を使ってエルフの国へと転移していった。
「さて、俺はこのまま王城の方に行ってみるか。」
王城の方に視線を向けると、そこからは黒い煙が立ち上っている。あそこにも魔物が押し寄せているのだろう。エートリヒは大丈夫だろうか。
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