ハリーノからのSOS
試食を終えた後、使わせてもらった解体場を軽く掃除してから、ジル達に別れを告げて魔物肉専門店を後にした。
「気付けばすっかり空が茜色に染まってきてるな。」
新居で家具の整理をしていたドーナたちは、もう戻っているだろうか?きっとお腹を空かせて帰ってくるはずだから、帰ったらすぐに夕飯の支度をしないとな。
「さて、じゃあ帰ろうか。」
そしてエルフの国へと繋がっている転送の結晶を握りしめた、その時だった……。
「ん?」
ポケットに入れていた、連絡用の端末がブルブルと震えたのだ。
「誰だろ……もしもし?」
「しゃ、社長っ〜!!ハリーノです!!」
こちらに連絡を取ってきたのはハリーノで、普段のおっとりとした様子とは違い、何やらただ事ではないような様子だ。
「ハリーノ?何があった?」
「あ、あの……突然魔物が街の地下からたくさん湧いてきて……い、今も街の人達が襲われてるんです!!」
「なんだって?社員の皆は大丈夫か!?」
「人間の兵士の人達が守ってくれたので、なんとか……。」
「わかった。兎に角、今すぐ転送の結晶を使ってエルフの国に帰るんだ。いいな?」
「そ、それがぁ……転送の結晶が使えなくて。」
「〜〜〜ッ、そういう事か。今すぐ向かうから、安全なところに隠れててくれ。」
「わ、わかりました!!」
そして連絡を切った後、すぐに俺は人間の国の王都に繋がる転送の結晶を取り出した。それに魔力を流してみるが……。
「クッ、やっぱり駄目か。……なら一か八か、賭けるしかないな。」
ここから人間の国の王都まで行くのには、どうやっても時間がかかる。だが彼女なら……一瞬で送り届けてくれるはずだ。
一縷の望みに賭けて、俺は龍化して一気に上空へと飛び上がった。そしてありったけの魔力を込めた手を天へと向けて掲げた。
「サンダーブレス!!」
僅かな魔力を残して、超高威力のサンダーブレスを天へと向けて放った。すると間もなくして、俺の前に魔法陣が現れ光を放ち始めた。
「届いたか。」
その魔法陣から、勢いよくレイが飛び出してくる。
「主っ!?今の魔力……いったい何があったのじゃ!?」
「レイ、来てくれてありがとう。状況を説明してあげたいところだけど、今はそんな時間はないんだ。俺を連れて、今すぐ人間の国の王都に移動してくれ。」
「な、何がなんだがわからんのじゃが……承知したのじゃ!!」
パンとレイが手を叩くと同時に俺と彼女の足元に大きな魔法陣が現れ、光を放ち始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます