ギガントオクトパスの味は…


 ジルとグリズ達の座っているテーブル席に、ギガントオクトパスのお刺身と吸盤のタコわさ、それと冷やした日本酒を運び込んだ。


「はいよ、お待たせ。」


「おっ?なんか美味そうなモンが出てきたな。」


「こっちが、さっきのギガントオクトパスのお刺身で、こっちは吸盤を使ったおつまみみたいな料理だな。」


「あの見た目の魔物が、こんな料理に変わるとは……いやはや、料理というのはわからないものですな。」


「ま、見てるだけじゃなくて実際に食べてみよう。ちょうど、料理に合いそうな酒も用意したからな。」


 俺は日本酒の瓶の蓋を開けて、みんなのところに置いたグラスに注いでいく。


「これは俺の故郷の酒なんだ。穀物を発酵させて作った酒なんだが……これが香り豊かで美味いんだよ。」


 そして俺以外の全員に日本酒を注ぎ終えたところで、早速ギガントオクトパスを食べてみることにした。


「それじゃ、早速……。」


 まず俺は、素材の味が一番わかるお刺身から食べてみた。


「ん……ん?なんだこの食感は。」


 醤油を少しつけたギガントオクトパスのお刺身を一切れ口に運び、噛んでみたのだが……その食感は俺の知っている生のタコのそれとはまるで違った。


「生なのにサクッと歯切れが良い。それに噛めば噛むほど、甘さとうまさがジワッと染み出してくる。」


 驚く俺と同様に、ジル達も見た目からは想像もできない美味しさだったギガントオクトパスに驚いていた。


「これはまた美味でございますな。何とも形容し難い独特の食感ながら、噛めば噛むほど、どんどん美味しくなって……。」


「まさかあの見た目の魔物がこんなに美味ぇとはな。食うまでわからんもんだぜ。それに……。」


 ギガントオクトパスのお刺身を飲み込んだグリズは、グラスに注がれた日本酒を口にすると、その美味しさを噛み締めていた。


「っはぁ〜、これを食った後に飲む、この酒もまた美味いんだ。」


「だろ?俺の故郷の自慢の味なんだ。」


 日本酒の味を知ってしまったグリズは、今度はタコわさに目をつけた。


「これと一緒に食っても美味いんだろ?」


「あ、それは……。」


 スプーンに山盛りにしたタコわさを頬張ったグリズは、次の瞬間カッと目を見開いた。


「めめ、めっ……ちゃくちゃかれぇぞ!?」


「ま、これは本来少しずつ味わうものだからな。」


 そう言いながら、俺もタコわさを一つ口に運ぶ。さっと茹でた吸盤のプリッとした食感がとても心地良い。鼻から抜ける山葵の香りも最高に合っている。


「うん、これはやっぱりおつまみ向きの味だな。酒が止まらなくなりそうだ。」


 今日の晩酌のお供はこれに決定かな。今から楽しみになってきた。

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