シンの心は…


 バフォメットとの契約の手続きなどで、ミースが今から忙しくなりそうだったので、俺とシンは今日のところは獣人族の国に戻ることにした。


 ミースとバフォメットに別れを告げて、俺とシンはギルドを後にした。すると、少し歩いてからシンが俺にポツリとお礼の言葉を伝えてきた。


「気を遣わせたようですまなかったなヒイラギ。」


「何も気なんて遣ってないぞ。そういう事は別に気にすることじゃない。」


 そう言いながら、俺はシンのことを道すがらにあった喫茶店の中へと連れ込んだ。


「む、ここは……何の店だ?」


「ま、良いから良いから座って飲み物でも飲みながら話をしよう。」


 有無を言わせず、飲み物を注文しシンを席に座らせた。そしてお互いの飲み物が運ばれてきたタイミングで、俺はシンに向かってずっと気になっていたことを問いかけた。


「で、実際どう思ってるんだ?」


「な、何をだ?」


「ミースの事だよ。」


「みみ、ミースの事か?な、なぜ突然そのようなことを聞くのだ?」


 そう問いかけると、露骨にシンが慌てふためき出す。


「いやぁ?なんかずいぶんミースの事を気にかけてるみたいだったからさ。何か特別な想いでもあるのかなって。」


「い、いや……そんな事は無くてだな。な、なんと言えばよいのか……。」


 ミースの事を説明しようとすると、シンの顔が赤くなっていく。


「シン、顔真っ赤だぞ?」


「むむ……むむぅ。」


 恥ずかしさを紛らわすように、シンは飲み物を一気飲みしてしまう。すると、小さい声でポツリと言った。


「み、ミースの事は…………か、可愛らしい女性だと思っている。」


「なるほどな。」


 恥ずかしそうに頬を爪でかきながら、本音を語ったシン。それを聞いて改めて、俺とミクモの予想が正しかったことを確信する。


「よくわかったよ。少し意地悪な質問だった、悪かったな。」


「う、うむ……構わぬ。」


 すると、シンは何か質問を思いついたらしい。


「ヒイラギは、その……恋情を抱いた相手にはどう接しているのだ?」


「へ?」


「ドーナやランがそうなのだろう?彼女らにはどのように接することを心がけているのだ?あ、生憎我は恋情に疎くてな……できれば教えてほしいのだ。」


 これは困る質問が来たな……。今となってはもう普段通り接するようになってしまったが、さ、最初の頃はどうだったかな。


「俺は……普段通り振る舞いながら、少し優しく接していた気がする。」


「なるほど、そうか。普段通りの立ち振る舞いの中に、相手への優しさを込めるのだな。」


 俺の答えをシンはどこからか取り出したメモ帳に、必死に書いていく。


「で、では次の質問なのだが……。」


 そうして、俺は逆にシンからの質問攻めに遭い、何度か自分の口から語るには恥ずかしい答えも答える羽目になってしまったのだった。

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