外に出てしまったバフォメット
みんなでダンジョンの出口となる扉の前に立つと、バフォメットがそわそわとし始めた。
「いよいよだな。この何もない場所から我が出られる時が来る。」
「仮に出られたとしてどうするつもりなんだよ。そんな凶悪な見た目じゃ、魔物って思われて討伐対象にされるぞ?」
「すべて返り討ちにすればよいだろう?」
「それは火に油を注ぐだけだ。」
「うむむ、ではどうすればよいというんだヒイラギ。」
「わからん。とりあえず出られるのか試してみて、出られたら考えてみるか。」
まぁ流石にダンジョンの外には出られないと思うけど。
……と、そんな風に思っていたのだが、いざ扉をくぐってギルドの中にあるダンジョンの入り口がある部屋に戻ってくると、俺の隣にはさも当然のようにバフォメットが立っていた。
「おぉ!!やはり出られたぞ!!」
興奮するバフォメットの横でミースがあわあわと、慌てふためいている。
「ど、どどど、どうしましょう。ヒイラギさん!!こ、この状況どうしたらいいですか!?」
「どうするべきかな……。」
そもそもこいつがダンジョンの外に出てこられている時点で、超異常事態なのは間違いないし、かなり危険な状況でもある。バフォメットがダンジョンの外に出られるという事は、ダンジョン内に蔓延る魔物も出てくる可能性があるという事だからな。
ちらりと俺がバフォメットのやつに視線を送ると、奴は今の現状の重大性を理解していないらしく、ニヤリと笑うだけ。
その反応に思わず苦笑いを浮かべていると、俺の脳内にふとある解決策が思い浮かんできた。
「バフォメット、お前帰れって言われても素直には帰らないよな?」
「うむ、なんと言っても初めての外界であるからな。堪能せずして帰りたくはない。」
「なら、この世界で生活するには何をするにしてもお金が必要ってことを覚えておいてくれ。」
「む?わかったが……それがどうしたというのだ?」
「ん、ちょっと待っててくれ。」
バフォメットとの話に区切りをつけて、俺はミースの方を向いた。
「ミース、コイツをギルドの防衛役兼教官として雇わないか?」
「えぇ!?」
「コイツの実力があれば、もしコイツみたいにダンジョンの外に魔物が出てきたとしても対応ができるはず。」
「それは確かにそうですけど……。」
「ギルドの防衛に加えて、コイツに新人の冒険者の教官をしてもらえば、かなりいい新人育成ができると思うんだ。」
「なるほど、確かに一理あるかもしれません。」
少し悩んだ末に、ミースは1枚の紙を取り出すと、そこに文章を書いていく。
「バフォメットさん、私と契約しませんか?」
「ほぅ、契約か。内容にもよるが、聞いてやろう。」
そしてミースはバフォメットと話し合いの場を設け、契約のことについて先ほど書いた紙を見せながら話し合いを始める。すると、すべての内容を聞いて、大きく頷いたバフォメットはミースが用意した契約書に指印を押していた。
こうしてバフォメットはミースとの契約の上、このギルドの防衛と冒険者たちの教官を任されることになったのだった。
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