ダンジョンで暗躍する存在
友好の証の握手を交わしている二人のところに歩み寄ると、横を歩いていたミースが、心配そうな表情でシンのもとに駆け寄った。
「シンさん、大丈夫ですか?」
「この程度問題ないのだ。」
殴り合いをしたために、口の中のいたるところが切れてしまっているらしいシンは、口元から少し血を垂らしてしまっている。
「強がるのは結構だが、一先ずその怪我は治しておいたほうがいいな。獣人族の国にそんな顔で戻ったら、大変だぞ。」
シンの傷を治すため、俺はマジックバッグからメリッサのハチが作ったハチミツを取り出した。
「すごく甘いけど、美味しいから食べてくれ。」
「うむ。」
その場にどっかりと座り込んで、シンはハチミツをスプーンで食べ始めた。すると、たちまち怪我が治っていく。
「おぉ、これは凄いぞ。体に力がみなぎってくるかのようだ。」
シンがハチミツを食べていると、バフォメットがまた俺の肩をちょんちょんと突いて、自分の分は無いのかといわんばかりに、顔を指さした。
「お前は大した怪我してないだろ?」
「まぁな。」
「まぁでも和解はできたみたいでよかったよ。」
「やはり男は拳で語り合うのが一番だ。最も早く心を交わせるからな。」
愉快そうにバフォメットは笑った。そんな奴に、ミースが質問を投げかける。
「あ、あの……あなたがここのダンジョンのボス……なんですよね?」
「間違いない、このバフォメットがダンジョンのボスである。」
「それじゃあなぜ、ダンジョンボスのバフォメットさんがここにいるんですか?普通ダンジョンのボスは、専用の部屋からは出られないはずですよね?」
「それは、すでにヒイラギには話したのだが、つい先日妙な女がここにやってきてな。そいつがダンジョンに何かしらの細工をしたらしくてな。」
「妙な女……お、おかしいです。私、このダンジョンに入る許可を出してるのは、ヒイラギさん達しかいません。それに先ほど確認したダンジョンへの潜入記録にも、直近はヒイラギさん達しか入っていないって記録が……。」
「ひっそり入られたって可能性は?」
「完全にないとは言えないんですけど、ギルドの職員が常に見張ってますし……。と、とにかく戻ったらすぐに職員に確認します。」
「お前たちが戻るのならば、我もこのダンジョンの外に出られるか……試してみるか。」
「それで本当に出れちゃったらどうするんだよ……。」
「ククク、その時はその時だ。」
そんなツッコミを入れてもバフォメットには届かず、結局このダンジョンのボス部屋にある帰還のための扉を目指すことになったのだった。
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