感じた嫌な気配


 翌朝、二回目の支援を行うために集まって移動の準備を整えていると……。


「………なんだ?」


 移動しようと、転送の結晶を握りしめていた時……突然背筋にざわざわと悪寒が走る。


「嫌な予感がする。」


 こういう時の嫌な予感は決まって当たる。


「ユリ、先にみんなと行っててくれ。」


「え?ど、どうしたんだ社長。」


「とにかく行ってくれ。それと、俺がそっちに行って戻ってくるように伝えるまで、絶対に戻ってくるなよ。」


 理解できていない様子のユリに、俺は魔力を込めた転送の結晶を手渡す。直後、集まっていたみんなは目の前から消えた。


「ハリーノはもう人間の国に行ってる時間だ。残ってるのは、アンネ達か。」


 アンネ達の売り場に駆け足で向かうと、そこにはすでにカリンがいて、何やらアンネ達に指示を飛ばしていた。


「む、社長か。ユリ達はどうした?」


「なんか嫌な予感を感じたので、とりあえず獣人の国に飛ばしました。」


「ん、良い判断だ。この国にいては少々危ないからな。」


「……ってことは、やっぱり何かが来てるってことですね?」


「あぁ、もう少しすれば再びナルダがここにやってくる。今は予め用意していたこちらの妨害魔法で転移を足止めしているが……時間の問題だ。」


「ついこの前来たばっかりなのに、もう……。」


「奴も奴で生涯に敗走というものを経験したことがなかっただろうからな。躍起になっているのだろう。こちらに干渉してきている魔力にも、荒々しさを感じる。故に漬け込み放題だ。」


 そう言って、ニヤリとカリンは笑った。


「さて、こうして話している間が惜しい。アンネ達も獣人の国へ飛ばすぞ。」


 パチンとカリンが指を鳴らすと、アンネ達も目の前からパッと消えてしまう。


「これで我が子らの避難は完了だな。社長の身内の者達はどうする?」


「大丈夫ですよ。みんなに怪我をさせたりはしませんから。」


「ん、実に心強い。では、此方らはナルダを打ち負かしに行くとするか。」


「はい。」


 そして俺とカリンは、ナルダが転移魔法の出口として魔法陣を出現させている場所へと向かうのだった。

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