ユリとの約束
それから色々と俺が酒を飲むときに心がけている事を、ユリに実践してもらいながら、お酒を少しずつ飲んでいると、ようやく彼女の表情に赤みが出てきた。
「少しずつ酔いが回ってきたみたいだな。」
「今がすごく気持ちいいぞぉ〜。」
「うん、なら今日はここでお開きだな。」
「も、もっと飲めるぞ?」
「今が一番気持ちよく酔えてるなら、これ以上は気持ち悪くなるだけだ。」
ここが引き時と見極め、片付けを始めていると、ユリが俺の手にぎゅっと抱きついてきて、邪魔をし始めた。
「片付けちゃダメだ!!」
「ユリ、もういい大人なんだから。気持ちの切り替えはしっかりしなきゃダメだぞ?それと、自分を律することも大事だ。」
「う〜……でも社長ともっと一緒にお酒が飲みたいんだ。」
「こういう機会はまた設けるから。今日はここで終わり……な?」
「じゃあ約束してくれ。」
うるうると目を潤ませながら、ユリはこちらに指切りをするように促してくる。
「わかったわかった。ほい、指切りげんまんだ。」
「ふふ……ふふふ、約束だぞ社……長。」
約束を交わすとすっかり安心したのか、ユリはこちらに倒れ込みながら気持ちよさそうに寝てしまった。
「さて、まずはユリを運ばないとな。」
ユリをおんぶして、カリンの屋敷へと向かう。
「お邪魔しま〜す。」
「ふぁ……あ、あれ?ヒイラギさん?」
屋敷の中に入ると、パジャマに着替えたマドゥが眠い目をこすりながらトイレから出てきた。
「マドゥ、ちょうど良かった。ユリの部屋って何処か分かるか?」
「ユリお姉ちゃんのお部屋はこっちです。」
マドゥの案内のもと二階へと上がる。案内されたところはカリンの隣の部屋……どうやらここがユリの部屋らしい。
「それじゃ、失礼して……。」
ユリの部屋に入って、蝋燭に火を灯して明かりを確保してから、ユリのことをベッドの上に運び込んだ。
「最近寒くなってきたからな。ちゃんと毛布をかけておかないと。」
そしてユリの体に毛布をかけて、部屋を出ようとした時……ふと俺の目にあるものが留まった。
「ん?これは……。」
ユリの部屋の中にある大きな勉強机、その上にはユリが今までメモを取った大量の紙が、一冊の本として纏められていた。
「ユリの努力の結晶か。」
中身を見てみたい気持ちはあるが、そこはプライバシーを守らないとな。
「また明日、よろしくなユリ。」
そう言い残して、俺は彼女の部屋を後にするのだった。
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