コラーゲン戦争の予兆


 ロックリザードはただ火を通すだけじゃ、筋がプルっとしたコラーゲンにはならない。圧力鍋で柔らかくしないとな。


「鍋の出汁と喧嘩しないように、味の強い出汁で煮込むんじゃなく、あっさりとした出汁で煮込もう。」


 今回ロックリザードを煮込むのは、一番出汁に酒と味醂、ハチミツとしょうがを加えた出汁でじっくり煮込んでいく。


「ようし、ひと段落着いたな。ちょっとコーヒーでも飲もう。」


 ウォータードラゴンの座っているテーブル席の方に向かうと、そこにはいつの間に入ってきたのかドーナとランの姿があった。


「あ、ヒイラギ。もう料理の仕込みは終わったの?」


「いや、ひと段落着いたからコーヒーを飲みに来ただけ。これからまだまだ仕込まなきゃいけないものがある。」


 コーヒーを片手に、俺もソファーに腰掛けた。


「ちなみに今日の夕ご飯は何にする予定なんだい?」


「今日の夕飯にはロックリザードとレインガルーダを使った料理にする。」


「ロックリザード……ってもしかしてコラーゲンたっぷりの魔物かい!?」


「その通り。この前みんなの期待に沿えなかったからな。今日はロックリザードを使ったコラーゲン鍋にする。」


「ふふふ、ついに来たわね。またこの肌にコラーゲンを与えるときがっ!!」


 ランとドーナの二人はすっかり興奮してしまっているが、コラーゲンというものを知らないウォータードラゴンは、一人首をかしげている。


「こらーげんって何ですかぁ?」


「コラーゲンっていうのはね、それはもうと~ってもありがたいものなの。鱗はつやつやになるし、肌に潤いももたらしてくれる……最高の物質なのよ!!」


「そうなんですかぁ~。」


 と、興味なさそうにウォータードラゴンは言ったが、ランがあることを告げると、彼女の眼の色が変わった。


「あら興味なさそうね。鱗がつやつやになったり、肌に潤いがあればオスに魅力をふりまけるのに。」


「そっ、それどういうことですかぁ!?」


「言ったままの意味よ。つまりコラーゲンをたくさん食べて美貌を磨けば……勝手にオスを魅了できるってわけ。」


「じゃ、じゃあいっぱい食べますっ!!」


「言っとくけど、競争率は高いわよ。コラーゲンを求めてる人はここにたくさんいるんだから。」


「下手したら戦争になるかもな。」


 ふと冗談で言ったつもりだったが、もしかするとウォータードラゴンの参戦によって、本当に戦争が巻き起こってしまうかも……。


 け、喧嘩にならずにみんな食べてくれるといいなぁ。


 そんなことを願いながら、俺はコーヒーを口にするのだった。


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