カリンとフィースタの企み


 一通りの仕込みを終えた後、俺はカリンの屋敷を尋ねに行った。


「ごめんください。」


 カリンの屋敷の扉をノックしながら声をかけると、ゆっくりと扉が開いて眠たそうにしているカリンが姿を現した。


「ふぁ……んん、社長か何用だ?」


「すみませんもしかしてお邪魔しちゃいました?」


「いや、構わんのだ。少々昼寝をしていただけ……それはそれとして、何か用か?」


「実は今日の夜ちょっとした宴会を開こうと思ってて、良かったら夕ご飯食べに来ませんか?」


「そういう誘いならば喜んで受けよう。場所は何処いずこだ?」


「場所はまだ決めてないんですけど……。」


「ならば場所ぐらいは此方が用意しよう。宴会に相応しい広い場所を確保しておく。」


「助かります。じゃあまた夜に。」


「あぁ、楽しみにしておくぞ。」


 そしてカリンと別れた後、今度はフィースタの屋敷に向かう。彼女の屋敷の前に辿り着くと、ちょうど洗濯物を干しているフィースタの姿が目に入った。


「あっ、ようこそおいでくださいました、あなた様。」


「やぁフィースタ。」


 彼女は一度洗濯物を干す手を止めてこちらに歩み寄ってきた。


「何か御用でしょうか?」


「今日の夜ちょっとした宴会を開くんだけど一緒にどうかなって。」


「まぁ!!それは素敵な御誘いですね、ぜひともお願いします。」


「わかった。じゃあまた夜に。」


「はいっ。」


 そしてヒイラギがその場を去った後、フィースタのもとをカリンが訪れる。


「話は聞いたなフィースタ。」


「はい。」


「これは此方らが社長を打ち負かす、またとない機会だ。わかっているな?」


「もちろんです。」


「よろしい。ではこれから調合室へと向かう。準備を整え、すぐについてくるのだ。」


「了解しました。」


 そして洗濯物を干し終わったフィースタは、カリンの後に続いてエルフ達が薬の調合に使う、調合室へと入っていった。

 調合室に入って、二人は白衣に着替えると色々な材料を調合台の上に並べていく。


「では、これより対社長専用の魔酒の調合を開始する。くれぐれも取り扱いには気をつけるように。」


「はい。」


 こうしてヒイラギの知らないところで、カリンとフィースタの二人は、彼を打ち負かすための魔酒を作り始めたのだった。


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