レインガルーダの買取手


 依頼書を眺めていると、ぐったりと疲れた様子のミースと、お金の入った袋を手にしてホクホク顔のウォータードラゴンがこちらに戻ってきた。


「お、お待たせしましたぁ……。」


「お疲れだったなミース。」


 ぐったりとミースはテーブルに伏した。


「大食い大会の賞金よりも多いですぅ〜♪このお仕事楽で良いですねぇ。」


「ふ、普通の人なら最初からこんなに順調じゃないんですけど……ベールさんが特別なだけです。」


 あはは……と苦笑いを浮かべたミースは、チラリと後ろに山になっているレインガルーダに目を向けた。


「あれ、どうしましょう……。素材を引き取ってくれる所も、あんなに大量に渡されても困るでしょうし……。」


「あれ売らないとギルドの収益にならないんだろ?」


「そうですね、魔物の素材を売るのがギルドの収入源の一つなので……何とか売りきらないと。」


「ふむ、ならいい場所を知ってるぞ?」


「え、ホントですか?」


「あぁ、だがその前に……処理だけはしといたほうが良いかもな。あのレインガルーダ、俺が軽く処理してもいいか?」


「大丈夫ですけど……何をするんです?」


「血抜きをして、羽を毟るだけさ。酒場の厨房も借りるぞ。」


「あ、どうぞ使ってください。」


「ありがとう。」


 酒場の調理場を借りて、さっきやったレインガルーダの掃除を進めていく。羽は羽でまとめておけば、これも買い取ってくれるだろう。


 そして計60匹のレインガルーダの下処理を終えてから、それらを全てマジックバッグに突っ込んで、二人の元へ戻った。


「お待たせ。」


「あ、ヒイラギさんお疲れ様です。」


「おふぁえりなはいれふ〜。」


 戻ってくると、二人はまたご飯を食べている最中だった。


「ウォー……コホン。ベール、口に食べ物を入れながら喋るんじゃない。行儀が悪いぞ。」


「んん……んぐっ、ぷはぁ〜。これで良いですかぁ?」


「それで良い。それ食べ終わったら一回獣人族の国に行こう。」


「わかりましたぁ〜。」


 いざ二人にスイッチが入ると、瞬く間に料理が卓上から消えてしまう。そして準備を整えたミースが、フンスと鼻から息を吐き出した。


「獣人族の国に行くのは初めてです!!」


「あれ、まだ行ったことなかったっけ?」


「最近あんまり暇がなくて……行きたいと思っててもなかなか。」


「そっか、じゃあ初めての向こうの国を楽しんだらいい。」


「でも、どうやって行きますか?ここからじゃ王都は遠いですし……。」


「それは、こうやって行くんだ。」


 俺は獣人族の国に繋がってる転送の結晶に魔力を込めた。

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