立候補者
ユリは俺の元へと歩み寄ってくると、こちらの目の奥を覗き込みながら、支援に立候補してきた。
「ヒイラギ社長、アタシ……その支援を手伝いたい。」
「ふっ、まぁ一番最初に来ると思ってたよ。」
この話をすれば、間違いなくユリが真っ先に立候補することは目に見えていた。彼女が立候補すると、獣人族の国の人員に少し不足が出てしまう。だからこそ、新しく新入社員を採用していた。
「わかってると思うけど、支援に立候補するってことは、子供達の面倒を見ることになる。きっと大変になるだろうが……それでもやるか?」
「無論だ!!」
「わかった。じゃあこれを。」
俺は彼女に子供達に教える予定のレシピを手渡した。
「それを明日から子どもに教えないといけない。しかも子供でもわかるように、簡単に……でも品質の高いものを作れるように丁寧にな。」
「お、覚えればいいか?」
「そうだな。ある程度覚えた上で、子供達には自分の言葉で伝えてあげるといい。」
「わかった。」
「まっ、最初のうちは俺もできるだけそっちの手伝いに回るから、あんまり気負わなくていいぞ?」
……ってもう覚えるのに集中して聞いてないか。
ユリのひたむきな姿勢に思わず笑みがこぼれていると、彼女に触発されて何人かの社員のエルフも支援に立候補してくれた。
「みんなありがとう。明日からよろしく頼むな。」
「「「はいっ!!」」」
最終的に支援の方に回ってくれる人員は、ユリを含めて五人。多すぎず、少なすぎない。丁度いい人数だな。
「えっと〜、それじゃリコ。明日獣人族に買ってもらう用の食材の発注は頼んだ。」
「おっ任せ〜。もう準備してあるよん。」
「さっすが、仕事ができるな。」
「まぁこれでも社長代理ですから。」
ふふんと、リコは大きく胸を張った。社長代理という肩書も随分と板についてきたらしい。彼女の場合、それと同時に、農地の管理人までこなしている。
「じゃあ、支援に回ってくれる人達は、明日俺の屋敷の前に集合で頼む。」
それから軽くユリ達と打ち合わせを終えてから、俺は屋敷へと戻るのだった。
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