支援についての話し合い


 孤児院の様子と現状を把握した後、俺はシンと共に子供達に見送られながら孤児院を後にした。


「子供達は元気そうであったが、あの院長が少々心配であるな。」


 帰り道の道中でシンがそんな事を呟いた。


「シンも感づいてたよな。実はさっきシンがお菓子を配ってる間に、ちょっと話をしたんだけど……マトモな食事をしたのがいつだったか、もう覚えてないらしい。」


「むっ!?ということは近頃まったく食事が出来ていないということか!?」


「あぁ、多分あの優しい院長さんの事だから、自分を削って子供達にご飯とかを食べさせてあげてるんだろうけど、それも近い内に限界が来ると思う。」


「では何か支援をしたほうが良いな……。」


「それについてもさっき話してきた。で、二人で話し合った結果……シンに一つだけ簡単な支援をお願いしたい。」


「何を支援すればよいのだ?金か?それとも食料か?」


「いや、そうじゃない。シンにお願いしたいのは、俺から食材を購入することなんだ。」


 するとシンは意図をわかっていないようで、首を横にかしげた。


「シンがあの孤児院を支援して、金と食料を定期的に供給することは可能だと思う。でもそれじゃ駄目だと思うんだ。」


「なぜだ?」


「子供達の成長のことを考えてくれ。ただお金をもらって何の苦も無く、何の経験もなく育った子どもと、支援は少ないながらも、お金を稼ぐ方法を知ってる子ども。将来的に国を支える人材になるのはどっちだ?」


「それは後者に決まっている。」


「だろ?だから、子供の成長の事を考えると、あんまりにも十分すぎる支援は逆に毒になるかもって話。」


「むむむ、そういう事か。我はそこまで頭が回らんぞヒイラギ……。」


「ま、事は単純さ。シンにお願いしたいのは、毎日俺から一定量の食材を買うこと。んで、それを孤児院に与えて欲しい。」


「わかったのだ。……一つ質問なのだが、我がヒイラギから食材を買う意味は何なのだ?」


「実のところ、俺が無償で孤児院に食材を配ってもよかったんだが、自分の国の孤児院なのに、他の国がそこの支援をしてしまうと、この国の面子が潰れるだろ?」


「む、確かに。」


「だからこの国の面子を保つためって考えてくれたらいい。」


 そう話していると、シンがすっかり呆気にとられてしまっていた。


「やはり頭が回るなヒイラギ。あの孤児院を救うことだけでなく、まさかこの国の面子まで考えていたとは……。いっそ政治をやってみるか?」


「はは、冗談はやめてくれ。ま、そういうわけで明日にでも食材を持ってくるから、頼んだぞ。」


「任された!!」


 その後シンと共に昼食を食べてから、俺は彼と別れエルフの国へと戻るのだった。

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