ユリのとある心配事
シア達までも眠ってしまう時間まで、カリンとフィースタと酒の席を共にしたが、気付けば二人ともテーブルに突っ伏して眠ってしまっていた。
「結局、残ったのはユリだけだったな。」
「ヒイラギ社長は酒も強すぎるな。」
酔い潰れてしまった二人を介抱しながら、ユリは苦笑いを浮かべた。
起きているのが俺とユリだけになってしまったところで、俺は彼女に仕事のことについて聞いてみた。
「そういえば、もう獣人族の国での出張営業には慣れたか?不満とか、不安みたいなのはないか?」
「安心してほしい、バッチリだぞ。」
「そっか、それは良かったよ。他の社員のみんなも大丈夫そうか?」
「みんな心から楽しんでるみたいだし、なにも問題ないと思う。」
「それは何よりだ。」
後で他の社員になったエルフのみんなにも、仕事に不満や不安な気持ちがないか、聞き取りをしておかないと。
改善して欲しい所があれば、すぐにでも改善していかないと、同じ不満を持っている社員にストレスを与えてしまうからな。
「あぁ……でも不安とかそういうのじゃなくて、一つ心配してることはあるな。」
「心配?」
「実は、七日に一回位の頻度で孤児院の院長がお菓子を買いに来るんだ。」
「常連さんか。」
「そう、でもお金に困ってるらしくて、いつも自分の分は買わないで、子供達の分のお菓子だけ買っていくんだ。」
「なるほどな。」
「で、まぁそれだけなら人が良い院長さんなんだけど……来る度来る度にどんどん痩せ細ってるんだよ。それが心配で。」
「ふむ。」
孤児院でお金が無いと言う話はよく聞く話だ。ユリの言う通り人の良い院長なら、自分よりも子供たちのことを優先するのだろう。
だから自分を切り詰めてまで、子供達を喜ばせるためにお菓子を買ってあげている。
「話はわかった。ちょっと俺の方でも調べてみるよ。」
「い、いいの?社長だって忙しいんじゃ……。」
「まぁ、忙しいことは忙しいけど。常連さんだし、困ってるならできる範囲で助けてあげたいって思ったんだ。」
「ヒイラギ社長……か、感謝する。」
「大丈夫だ。」
ユリの頭をポンポンと撫でてから、俺はグラスに残っていた酒を一気に飲み干した。
(王都の孤児院の事情なら、きっと国の重役に聞けば何かしらわかるはず。明日にでも出向いてみるか。)
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