孤児院のこと
翌朝、朝食を食べてからカリン達は各々の家へと戻っていった。それを見送った後で、俺は獣人族の国へと一人で向かった。
「多分、この王都にある孤児院なんだと思うけど……どこにあるんだろうな。」
何回もここには訪れているが、この王都は滅茶苦茶広い。だから行ったことのない場所の方が多いんだよな。
「まぁ、兎にも角にも一回王宮に行った方がよさそうだな。」
そして王宮へと向かって歩いていると、いつもユリたちがお店を構えている場所でミクモが一人でせっせとお店の準備をしているのが目に入った。
「おはようミクモ。」
「む?今日はまだ、お主だけかの?」
「今はな。もうそろそろユリたちが来ると思う。……あ、そうだ。ミクモに一つ聞きたいことがあるんだけど。」
「なんじゃ?」
「七日に一回ぐらい孤児院の院長さんがここに訪ねてきてるらしいんだけどさ。」
「あぁ、はずれにあるの孤児院の院長のことじゃな。確かに度々来ておるなぁ。」
「ユリが言ってたんだけど、最近ずいぶんその人が痩せてきてるって話を聞いてさ。」
「確かに何やら最近急に瘦せこけたような感じじゃったな。……で、その院長がどうかしたのか?」
「良く店に来てくれてる常連だし、何か困ってるなら助けになれればいいなって思ってさ。」
するとミクモは何やら少し難しそうな表情を浮かべた。
「なるほど、その気持ちはよくわかるのじゃが、なかなか難しい問題やもしれんぞ?」
「というと?」
「恐らく困っているものといえば、金の問題じゃろう。しかも一時的に懐が温かくなるような、ちっぽけな金では解決は無理じゃ。仮にもし金を恵んでやるとすれば、長期的に孤児院の子供たちが餓えることのないほどの金銭を恵んでやらねばいかんじゃろう。」
「確かに。」
となれば一番彼らのためになるのは、ただお金をあげることじゃなく……何かお金を得る方法を教えてあげることか。
「どうしようかな。」
「ま、一度シン坊に掛け合ってみるのも手段の一つじゃと思うぞ?なんだかんだこの国で一番の権限を持っているのはシン坊じゃからな。」
「確かにそうだな。悩む前に相談した方が解決が速そうだ。ごめんなミクモ、準備の邪魔しちゃって。」
「別に構わんのじゃ~、話している間に終わっていたからの。」
そしていつの間にやら、ミクモはきゅっとエプロンを結んで開店の支度を整え終えていた。
「じゃ、俺は今からシンのところに行ってくるよ。今日もユリたちのことよろしく頼む。」
「うむ!!任されたのじゃ。」
ミクモと別れると、当初の目的通り俺はシンのいる王宮に足を運ぶのだった。
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