食事のお誘い


 お酒を飲んでいた俺以外の面々がすっかり潰れてしまった頃、屋敷に誰かが訪ねてきた。


「この時間ってことは……。」


 ある程度の予想をつけて扉を開けてみると、そこには目の下に大きな隈を作ったカリンがいた。


「お、お疲れ様です。」


「ここ最近すまないな社長。マドゥの事を任せっきりにしてしまって。」


「いえいえ、全然大丈夫ですよ。……今ちょうどご飯を食べていたところだったんですけど、良かったら食べていきます?」


「良いのか?」


「もちろん、たくさん食べて英気を養っていって下さい。」


「では、せっかくならユリとフィースタも連れてきたいのだが……構わんか?」


「大丈夫ですよ。」


「感謝する。」


 そしてカリンは目の前からパッと姿を消すと、次の瞬間にはユリとフィースタを連れてまた現れた。


「お招き頂いてありがとうございます、あなた様。」


「ご、ご馳走になるぞヒイラギ社長。」


「フィースタもユリもいらっしゃい。たくさん食べてってくれ。」


 玄関口で話していると、リビングからひょっこりと顔を出してマドゥがこちらの様子を伺っていたらしい。それにカリンが敏感に気づいた。


「マドゥ!!」


 マドゥの事を目にした瞬間、カリンの目の下にあった隈がパッと消えていた。いったいどういう原理なのだろう……と疑問に思っていると、カリンがいつの間にやら屋敷の中に入って、マドゥのことをぎゅ〜っと抱きしめていた。


「ま、ママ…お、お帰りなさい。」


「う〜むっ、ただいまだ!!すまなかったなぁ、マドゥや。しばらく淋しい思いをさせてしまった。」


「ぜ、全然大丈夫だったよ?シアちゃん達とずっと一緒だったし……。」


「今日からは、これまでの埋め合わせを含めてさらに愛情を注いでやるからなぁ。楽しみにしておくのだ。」


 仲の良さそうな二人の様子を見て、フィースタとユリの二人も笑っていた。


「マドゥが家族になってからというものの、母上が楽しそうだ。」


「ふふふ、そうですね。」


「ちなみにユリは、あれを見て羨ましいとか思ったりしないのか?」


 ふと疑問に思ったことを問いかけてみると、ユリはう〜んと頭を悩ませた。


「羨ましいと思わない……と言えば嘘になる。とはいえ、アタシももう立派なエルフの大人になったしな。」


 そう語ったユリの言葉を聞いて、俺は以前フィースタが教えてくれた、エルフにおいて大人と認められる年齢を思い出してしまった。


(ん?…………ん!?エルフの大人って確か、100歳を超えてやっと大人として認められるって話を前にフィースタが……。)


 チラリとフィースタの方に視線を向けてみると、俺の思っていたことを見抜いたようで一つ大きく頷いた。





 ちなみにこれは後ほど判明したことなのだが……社員として入ってくれたエルフ達全員が、エルフ基準で大人と呼ばれる年齢だった。

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