ヒイラギvs静葉
それから十分程経つと、息も絶え絶えな様子のドーナとランが仰向けに転がっていた。一方の師匠はというと、全く息も切らしていないどころか、汗一つかいていない。
「ふむふむ、基礎は出来ているな。上等上等。」
「ぜぇ……ぜぇ、な、なんで息も切れてないのよ。」
「ま、これでも己の武を極めているからな。未だ極めていない者には負けんさ。」
愉快そうに師匠は笑うと、今度は俺の方に視線を向けてきた。
「さて、この前はマトモに手を合わせる前に、勝手に自爆してしまったからな。改めて……お前の腕を確かめさせてもらおう。」
「なんとなくそんな流れになるような気はしてましたけど……じゃあ久しぶりに胸を借りさせて貰います。」
ペコリと一礼してから、俺は師匠へと向かって構えを取った。
「いきますよ。」
「あぁ、来いっ!!」
縮地を使って一気に距離を詰め、師匠と俺の間合いへと入る。そしてお互いに目が合った瞬間、俺は更に師匠の背後へと回り込んだ。
「む……。」
「こっちに来てから、普通の人間じゃできないような動きもできるようになったんですよ。」
こちらを振り向けていない師匠へと向けて攻撃を放つ。
「攻撃は見えなくても、避けることはできる。」
その攻撃を師匠はあっさりと身を屈めて躱した。それと同時に足払いをかけてくる。
「それは読んでましたよ。」
下半身に力を入れて、足払いを受け止め、そのまま超至近距離での打ち合いへと発展する。
「ははは!!さながら攻撃の嵐だな。凄まじい連撃だ。」
今のステータスで繰り出せる最速の攻撃で攻撃を繰り出すが、師匠にはまるで当たる気配がない。
「それを全部躱しきってる師匠がやっぱり異常なんですよ。」
ここいらで少しテンポを変えてみるか……。
ブラフとして、俺はフェイントを織り混ぜた攻撃に切り替えた。今の俺のステータスで放たれるフェイントは、師匠にとっては無視できない攻撃だ。だからこそ、通じる。
「っ!!しまっ……。」
フェイントの攻撃に騙され、一瞬の隙を見せてしまった師匠の顔の前に拳を突きつけた。
「これで一本ですね。」
「〜〜〜っ、はぁ〜……フェイントがフェイントじゃないんだよ。どれも一発もらえば手痛いものばかりで、本物が見分けれなかった。」
「これも今のステータスだからできることですね。」
「ずるいなぁそれ。私ももっとステータスとやらを上げて、対処できるようにせねばな。」
日本にいた時はマトモに相手にならなかったが、この世界だとまだ勝てる見込みがある。
ただ、師匠は負けず嫌いだから本当に俺を超えるようなステータスを目指して頑張りそうだな……。
それからリベンジの組手をもう一度して、今日のところは勘弁してもらった。
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