疲れた体に温かいココアを


 師匠との組手が終わった後、俺は一度屋敷に戻ることにしたが、ドーナとランの二人は師匠に何かアドバイスを貰うため、まだ残って稽古を行うようだ。


「じゃ、俺は一回戻ります。」


「あぁ、ドーナたちのことは私に任せてくれ。」


「ヒイラギ、帰ったら美味しいご飯用意しといてちょうだいね!!」


「はいよ。頑張ってな二人とも。」


 三人に別れを告げて屋敷に戻ると、ソファーの上でぐでん……と疲れ切って寝転がっているレイとリリンの姿があった。


「二人ともお帰り。だいぶお疲れみたいだな。」


「今日は仕上げがあった故疲れたのじゃぁ。」


「魔力もカラッカラよ。」


 どうやら今日はナルダの妨害魔法対策の仕上げがあったらしく、二人ともかなりお疲れのようだ。


「ちょっと待っててな。」


 俺はキッチンへと向かうと、ある飲み物を作り始めた。


「ちょうど寒くなってきたし、疲れも取れるあの飲み物を作ろう。」


 まずは牛乳を鍋に入れて温め、その間にココアパウダーを軽くフライパンで煎る。そしてココアの香りが立ってきたところで砂糖を入れ、ココアパウダーがダマにならないようにゆっくりと牛乳を注いでいく。


「よし、完成だ。」


 出来上がったココアを二人のところに持っていった。


「ほい、二人ともこれ飲んでみてくれ。」


「おぉ、感謝するのじゃ主!!」


「ありがと……。」


「熱いから気を付けて飲んでくれ。」


 そして二人はココアに息を吹きかけて冷ましながら、ゆっくりと飲み始めた。


「ぷはぁ〜……生き返るのじゃあ〜。」


「これ牛乳を使ってるのね。甘くて、すごく飲みやすいわ。」


「喜んでくれたなら何よりだよ。」


 俺もソファーに腰掛けてココアを飲んでいると、下からじっ……と視線を感じた。ふと下に視線を落とすと、股の間からシアとメリッサがこちらを覗いていた。


「二人も飲むか?」


「「うん!!」」


 気付けば、マドゥも遠目で物欲しそうにこちらを見ていた。


「よし、ちょっとまっててな。」


 三人分のココアを作って再びテーブルに戻ると、遠目で見ていたマドゥにこっちこっちと手を振った。


「ほら、マドゥもおいで。」


「あ……は、はい。」


 シアとメリッサの間に座ったマドゥにもココアを、差し出す。


「あ、ありがとうございます。」


「遠慮はしなくて良いんだから、欲しかったらシア達みたいに教えてくれて良いんだぞ?子供が遠慮なんてするもんじゃないんだから。」


「う、うん。」


 三人が飲んでいるのを眺めていると、二階から眠そうに目を擦りながら降りてきた。


「あ!!なんか美味しそうなの飲んでる!!」


「おはようフレイ、フレイも飲むか?」


「飲みた〜い!!あ、ライラのも作ってもらって良い?」


「もちろんだ。」


 そしてみんなでテーブルを囲んで、ココアを飲んで温まりながらまったりと過ごすのだった。


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