解放
ゆっくりと目を開けた師匠に、にこやかに微笑みながらイリスが声をかけた。
「おはようございます。気分はいかがですか?」
「すこぶる良いな。私を縛り付けていた何かが綺麗サッパリと無くなって、身も心も私の思い通りに動く。」
「それは何よりでした。」
「ただ、この世界に来てから手にした力がどこかに消え去ってしまったような、そんな脱力感も感じる。」
「それは、静葉さんが死の女神から供給されていた力が失われてしまったからですね。」
「……つまり、今の私は日本にいたときと変わらない。ただの一般人に戻った……ということか?」
「残念ですがそういうことになります。」
「ふむ。」
力が失われたことに対しては、師匠は特に何も思っていないようで、残念がっている様子はない。むしろ少し嬉しそうだ。
「まぁもともと借り物の力だ。私自身の本当の力ではないから、特に何も思わないな。」
そんな師匠へと向かって鑑定を使ってみると、ステータス的にはもう一般人そのものとなっていた。
スキルは俺と同じ武術のスキルと、家事とかそういうものが書いてある。
「うん、一般人って感じのステータスになってますね。」
「な、なんだ一般人とは。」
「いや、普通でいいな……って事ですよ。」
「それは褒められてるのか?」
「褒めてます。」
そして師匠が死の女神から解放されたことを、俺はカリンに報告しに行った。すると、すぐにカリンが師匠の元を訪れて拘束を解除してくれた。
「これでよし。もう動けるはずだぞ。」
拘束から解放された師匠は、少し体を動かすと、全身からバキバキと骨が鳴る音が聞こえてきた。
「ん〜〜〜っ、ギチギチに拘束されていたから、体がバッキバキだ。感謝するぞ。」
そう感謝を述べた師匠だったが、カリンがふと首を傾げてしまった。
「はて、言葉が理解できぬ。この前はしっかりと聞き取れたのだがな……。」
「はっ!?な、なんだ?言葉がわからない?」
カリンと師匠はお互いに言葉が理解できていないらしい。これはどういうことなのだろう?
「もしかして……静葉さんが言語理解のスキルを持っていないから、日本語しか話せていないのではないでしょうか。ヒイラギさんは静葉さんの言葉は理解できていますよね?」
「あぁ、師匠の言葉もちゃんと理解できる。」
「ということは、やっぱり……。」
「そういうことみたいだな。」
師匠を解放できたのは良いが、また新たな問題に直面してしまった。後で早急に言語理解のスキルを持っている魔物を倒して、宝玉をドロップさせておかないとな。
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